スマホやパソコンからくる首肩こり…予約の取れない鍼灸師が教える「意外なツボ」とは? 全身の不調に効く「万能ツボ」も


何気なく手にしたスマホ。気がつくと1時間以上経っていた……という経験は、誰しもが思い当たるはず。さらにパソコン作業や家事なども重なって、首や肩はガチガチに。

埼玉と東京で訪問治療を行い、不調との向き合い方などをSNSで発信している鍼灸・あん摩マッサージ指圧師の森田遼介先生に、自律神経を整える養生の基本を教えていただく短期連載。
第3回は、自分で簡単に押せるおすすめのツボと基本的なツボの刺激方法を紹介します。

※本記事は、森田遼介:著『自律神経にいいこと大全100』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

*連載第1回(「トマトは毎日食べるべき」専門家がすすめる“一緒に摂るとコレステロール値が下がりやすくなる”食材とは)はこちら。

*連載第2回(夏の終わりの“不調”はこうケアする…「15分の昼寝」「1日10分の一人時間」メリットと注意点を自律神経の専門家が解説)はこちら

 

首肩こりに「手三里」のツボ

首や肩のこりに効く代表的なツボのひとつに「手三里(てさんり)」があります。

腕からのつながりを見てみると、場所は、肘を曲げた時にできるシワの先端から、人差し指方向へ指3本分(人差し指から薬指の幅:2寸)スライドさせたところの圧痛点を探してください。刺激する方法は、指圧や優しく揉む、お灸やカイロなどで温めましょう。

鍼灸院では仰向けの体位で治療をスタートするところも多いですが、私はここの硬さを触るだけで首肩こりの度合いがある程度分かります。みなさんの中にも、首や肩がつらい時、無意識にコリコリとツボを触っている人も多くいると思うのです。

特に、集中して画面を凝視している時に頭が前に出ている姿勢が多い人や、歯の噛み締め癖がある人は、首の側面にある胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)や、あご周囲の筋肉が張りやすいことから、首肩こりが発症しやすくなります。

 

首肩こりのサブツボ「曲池」

「曲池(きょくち)」は、肘を曲げてできるシワの外側端にあるツボです。曲池は、首肩こりの他にも歯痛や過敏性皮膚炎、風邪の頭痛、眼精疲労、生理不順、のぼせなどの治療時に使用されます。
手三里から曲池の間のエリアにこりを見つけられる人も多いので、一緒にチェックしてみましょう。

ところで、つらい局所(首や肩)以外の部分を刺激することに疑問を持つ人もいるかと思いますが、それは手三里が属する経絡(けいらく)が、肩や首へとつながっているためです。経絡とはツボとツボを結ぶ道のことで、手三里が属する経絡である「手の陽明大腸経(ようめいだいちょうけい)」は、人差し指から始まり合谷(ごうこく)や手三里を通って、肩・首の側面・顔面へとつながりがあります。

 

「迷ったらコレ!」の万能ツボ

現在、WHO(世界保健機関)で公認されているツボの数は361種類あり、左右に一対ずつ存在するツボも合わせると全部で700個あります。

そんな中から自分の悩みに効くツボを覚え切れないという方におすすめしたいのが「合谷(ごうこく)」と「百会(ひゃくえ)」です。この2つは「万能ツボ」といわれていて、私たち鍼灸師もよく使うツボです。

 

全身の幅広い不調に「合谷」

万能ツボ1つ目は、全身の幅広い不調に効く「合谷」。
合谷は主に風邪や頭痛、眼精疲労、肩こり、歯痛、生理痛、便秘などの様々な症状に対応します。また、スマホの使い過ぎで指が疲れた時には、合谷を指圧すると気持ちが良く、手が楽になります。

場所は、手の甲を上に向けて指を広げ、人差し指の根本にある骨の中間点にあります。骨の際(きわ)を手の中心方向へ正しく押すことができるとツーンと響きますので、それが正しく押せている証拠です。

ツボの刺激の仕方には、指で押す手軽な指圧の他、お灸、カイロやホットタオル、ドライヤーで温める、揉むなどがあります。市販のお灸を使うと、台座面が直径1.5センチ程度あるため、指圧よりもツボに当たる確率が高まるメリットがあります。

 

ストレス系の症状には「百会」

万能ツボ2つ目は、ストレス系の症状に効く「百会」。
百会は頭痛や抜け毛、耳鳴り、めまい、不眠など、主にストレスが関わる不調に対して効果を発揮します。場所は、頭を左右に分ける縦のライン(正中線・せいちゅうせん)上で、左右の耳を結んだ交点です。

指圧でも効果的ですし、イライラしている時には、爪楊枝を15〜30本ほど束にして輪ゴムで縛る自家製の「爪楊枝鍼(ばり)」をぜひ試してみてください。爪楊枝の先端側で、百会を中心に周囲をトントンと1〜2分、頭皮を刺激すると気持ちがすっきりしますよ。

 

ツボ押しの「3の法則」

最後に、森田先生が推奨する正しいツボ押しの手順もご紹介。

①圧痛点を探し、皮膚に対して垂直に押す。
②3秒かけて徐々に押していく。
③痛気持ちいい強さで3秒キープする。
④3秒かけて徐々に力を抜いていく。
⑤これを3回ほどくり返す。

姿勢をできるだけ正し、ゆっくりと呼吸をしながら行いましょう。特に大切なポイントとしては、「圧痛点を正しく探すこと」「3秒間持続圧を入れること」の2つです。また、押す強さは「痛気持ちいい強さまで」を心がけましょう。

 

このほかにも、『自律神経にいいこと大全100』では、様々な症状に対するツボや、サブのツボもいくつか一緒に紹介しています。複数のツボを確認し、反応が大きく感じる自分の「推しツボ」を選んでみてください。

イラスト/日江井香

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自律神経にいいこと大全100
著:森田遼介

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森田遼介
TC鍼灸マッサージ院 院長

国家資格:はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師。鍼灸院などに勤めながら、勤務後や休日に個人で訪問治療を行う。予約1年待ちが続いたタイミングで2023年2月に独立し、4か月で予約満杯となる。現在は埼玉・東京エリアの訪問自費治療を中心に活動。
治療の特徴としては、全身の筋肉や内臓の調整をしつつ、不調の改善以降は再発の防止や他の大きな病気にかかるリスクを最小限にする、「未病」に対する治療で、人生100年時代をできるだけQOL(生活の質)を落とさない目的の治療が需要として高い。
2021年2月NHK特番「東洋医学ホントのチカラ」・2021年4月NHK「あさイチ」出演。書籍『しんどい低気圧とのつきあいかた』(新潮社)ツボ監修。本書が初の著書となる。
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