
東村アキコ×山田玲司 豪華対談!【後編】漫画みたいな恋って本当にできるの…?とか言ってて彼氏ができない人は、すぐにこれを読んでください。
○○○○意味ない!
東村:うーん……私の特技で、どんなイケメンだろうが、写真にペンでいろいろ描き足して老人にするっていうのがあるんだけど。「わたしイケメンアイドルのことが好きで、彼の事しか考えられなくて~」ってアシスタントさんがいたら、「写真貸してみ?」つって、コピックの薄い茶色とかグレートとかをダーーッと使って老人にして、頭もホワイトかけてハゲにすると、イケメンアイドルが年取ったらこんな風になるんだなって顔ができあがる。
<爆笑>
東村:どんなイケメンも「あ、このパターンのおじさんいるわ~」って感じになるんだよ。人間やっぱり何らかのパターンには当てはまっちゃうんだよね。「彼もこうなるんだよ?」って見せると、「あ~」みたいになって。「じゃあ理想とかどうでもいいのかな?」って感じになる。イケメンアイドルだって一生あの顔なわけじゃないし、だとすれば、あんまりこだわっても意味ないかな?みたいな気持ちになれる。これ、オススメの方法です(笑)。どうせみんなおじさんになっちゃうんだから!今はカッコよくてもさ!
-顔面偏差値より「老後いかにいい茶飲み友達になれるか?」っていうことをポイントにした方がよさそうですね。
東村:うん。若いときはイケメンの方がドキドキさせてくれるけどさ。
-見た目は変わっちゃいますしね。
東村:見た目はほんと変わるよね。
山田:そりゃあ、どうせならイケメンがいいに決まってるけど、その人が自分を幸せにしてくれるか、人間として魅力的かどうかってのは、全く別の話だよね。見た目っていうのは魅力の一部でしかないし、むしろ見た目が悪いのにすごく魅力的な人もいる。
なんていうのかな、八百屋で綺麗な野菜選ぶみたいに選ぶ人っているじゃない。
でも、そうじゃないだろっていう。栄養価とかもあるだろって話で。そういう見た目至上主義って、80年代からなんだよね。70年代くらいまでは「男は中身だ!寅さんカッコいいじゃん!」みたいな時代があったんだよね。男気とか誠実さで男の価値は決まるみたいな。それが80年代に入ったら景気がよくなって、表面的なものばっかりの時代になって。まあ、みんなその被害を受けてるなって思う。
-それは男も女もですよね?
山田:男も女も見た目至上主義者であり、同時にその被害者でもあるわけだよ。
東村:うんうん。
山田:でも、そろそろ変えていかないといけない時期なんじゃないの。「劣化」っていう言い方とか、誰も幸せにならないからね。だって、みんな劣化するんだし。
あと、40代になってもモテるって情報も、もっと出したほうがいいよ。「30過ぎると終わりだ」って思いすぎてる。
落ち着きなさいよって。そんなの個体差なんだから、いくつになったら終わりなんてのはない。
そういう意味では確かに「イケメン意味ない」って言っといた方がいいかもな。
-「イケメン意味ない」は絶対載せます(笑)。
山田:イケメンであることが絶対の価値になってしまうのは違うと思うし、内面のいい男の方がいいよっていうね。それはごく当たり前のことで、昔はもっとちゃんと言ってたんだけどなあ(笑)。
-見た目至上主義という幻想をぶっ壊してその先に行った人の方が幸せになれるってことですよね。
山田:そうだね。「この人こんなブサイクなのに、ほんとに素敵だな」って人はいるからね!
そのときに「こんなブサイク」っていうのは、マイナスじゃなくて、むしろプラスに働くからね!
ただ、頭ごなしに「イケメン意味ない」って言ってもさ、やっぱりみんなイケメンが好きじゃん。
でも、イケメンとどう付き合っていくのかって部分は、ちゃんと考えないとダメなんじゃないかと思うよ。
ファンタジー脳をぶっこわせ!
幸せはその先にある。たぶん。
東村:さっきの先生の言葉を借りれば「審査員席から降りる」ってことが肝心なんじゃない?審査員席から降りてひとりで楽しく踊る。「楽しそうだな」って入ってくる人を待ちもしない。踊るっていうか、踊り狂う。そういうことじゃないのかな、モテるって。
-ネガティブな感情のコントロールが上手い人がモテると。
東村:うちのお父さんが、「女で一番ダメな女は陰気な女です!!!結婚して家に帰っても嫁が陰気やったらどげんすっか!?」って言いよったもんね(笑)。超ウケたけど。「暗い」じゃなくて「陰気」って……と思って。
なんかさ、結婚前はキャッキャしてて明るかったのに、結婚したら性格が変わっちゃう子もいるんだよ。
旦那が仕事で遅いから、ひとりでテレビみて、ごはんたべて。待ってる間にどんどん落ち込んでいじけてきて。
そんで旦那が帰ってきたときにはマックス機嫌が悪いってパターン。こういう夫婦がほんとに多いのね。
それが父の言う「陰気な女」だと思うんだけど、それなら勝手に飲みにいっちゃって、酔っ払って帰ってくるぐらいの方がいいような気がするよね。
山田:アキコはすごいんだよ。いつもなんかやってるの。「今度お笑いのライブやるけどくる?」「ヒモザイルのPVできたけど見る?」とかさ(笑)。「え?なに?それ同時にやってたの?」みたいな。いつもいろんなことをやり過ぎてて、全部の報告がなされないまま、次が決まっていく。
東村:そう!報告しきれない!
山田:俺はアキコみたいな人ってトレジャーハンターだと思うんだよ。いつも何かしらの山を登っていて「あの山を登ってきたらこんな宝がありましたよ」って報告してくれるのは、純粋に楽しい。
持ってくる話題が不満とか愚痴じゃなくて、宝探しの報告なんだよね。そういうことをやってる人って、本当におもしろいし、陰気になるヒマがない。例えば悲しいことがあっても、すぐ次の行動に移るじゃない?
東村:すごく論理的に考えるんだよね。「この悲しみを引きずらないためには、どうしたらいいんだ?ちゃんと考えよう!」って。
山田:本当はどうしたいかってことを考えると、やりたいことってちゃんと見つかるもんだよね。
東村:そうなのよ!考えればわかるハズなのよ。でもみんなそこを認めたくなかったり勇気がなかったりして。
山田:ほんと勇気一発で変わるよね。本当にやりたいことをやりはじめたら、悩んでる場合じゃなくなるし。そういう風に生きていると、人生意外と上手くいくよ。最近すごくそれは思うね。
悲しくて立ち上がれない時は、好きな物を食べて、悪口を言ったりとかさ。要するに、自分の中の毒を出して、自分を徹底的に甘やかして、賛美して、みたいなことだよ。あまり自虐にになって、自分を責めない方がいいんじゃないかな。
東村:私、ムカつくことはあるけど、落ち込むことはないから、逆に落ち込んでベッドで泣いたりしてみたいもんね(笑)。もちろん「失敗したー!」とか思うんだけど、落ち込むっていうのとは違うんだよな……。
山田:やっぱり俺もアキコも祭りの仕掛け人なんだよね。
「やる」って決めて、手を挙げちゃった以上、グジグジ悩んでる場合じゃなくなるんで。
そして気がつくと自分だけじゃなく、周りのみんなも楽しい感じになってる。
そこに希望というか、幸せになるコツがあるんじゃないかな?
「好き勝手してるのにモテる大人の女」
一条ゆかり先生『正しい恋愛のススメ』
東村:マジで大人の恋愛のバイブル。主人公が惚れる大人の女性がとにかく余裕があるし、無理しないの。
不機嫌だったら最初から不機嫌なの。若い女の子って最初は機嫌よくてもあとで不機嫌になる。
だから男の子も「どうするどうする?!」ってなっちゃうんだけど、順番逆なのが大人の女なんだなってことが読んでるとすごいわかる。あと、基本スタンスとして、男に幸せにしてもらおうっていうのがないのもいい。
山田:男に「助けて」って言うんじゃなくて、「助けてあげてもいいわよ」って言うんだよね。
【PROFILE】
東村アキコ(ひがしむら・あきこ)
漫画家 1975年宮崎県生まれ。「ぶ〜けデラックス」増刊号にて『フルーツこうもり』でデビュー。その後、「Cookie」にて初の連載『きせかえユカちゃん』を開始してからというもの、『ひまわりっ ~健一レジェンド~』、『ママはテンパリスト』、『海月姫』、『主に泣いてます』など次々にヒット作を連発。2015年、自身の半生を描いた『かくかくしかじか』で第8回マンガ大賞、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。アラサ―女子たちに衝撃を与え、いま大きな話題となっている『東京タラレバ娘』、上杉謙信女性説を基にした『雪花の虎』とグルメ探偵奇譚『美食探偵 明智五郎』など、数多くの漫画を連載中。
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