「自分にはなんの才能もない」「才能があったら人生バラ色なのに」――諦める前にこの一冊!
「自分にはなんの才能もない」――だれもが一度は思ったことがあるのではないだろうか? 私も日々、才能のなさを痛感している。文章を書く仕事をしているが、際立って文章が上手いというわけでもなく、コミュニケーション能力が低いため取材も上手くいかず、「他に仕事を探そうかなあ」と、転職サイトを眺めてばかりいる。
そんなとき出会った一冊の本に、私は救われた。その本とは、『才能が見つからないまま大人になってしまった君へ』(神岡真司:著/ワニブックス刊)。タイトルを見た瞬間、「まさに自分のための本だ!」と、運命すら感じてしまった。
「才能は、誰にでもあるのです。しかし、そのことに気づいていない人があまりにも多いだけなのです。肝心なことは、その才能に早く気づき、大事に育てることです」(前書きより)。
では、どうすれば才能に気づくことができるのか? 本書の中からいくつか紹介したい。
「人より速くできるもの」を追求しよう
数字に強く、計算が速い。文章をまとめるのが速い。パソコン操作が速い。しゃべるのが速い。人を説得するのが速い。本を読むのが速い。計画し実行するのが速い―。「しゃべるのが速いなんて、才能なの?」と思われる方もいるかもしれない。しかし、それも立派な才能だと筆者は言う。
「スピードが速い――のは、その分野での何らかの才能が隠されているということです。速くできるというのは、物事の本質をつかむのが速いからこそ実現します。どこにポイントを置き、どこを省略するか――といったコツを呑み込んでいるわけです。」
しゃべるのが速いのは、“表現のツボを心得、言葉の取り扱いに手慣れている”ということ。計画し実行するのが速いのは、“段取りの組み立てと優先順位付けが上手”ということ―。そう考えると、一つや二つ、才能のヒントが見つけられるのではないだろうか。
「批判されるもの」には才能が眠っている
なぜ人は、他人を批判するのか? それは、「対象に嫉妬や脅威を感じるから」だと著者は言う。自分よりうまくいきそうな人を見ると、へこませてやりたくなったり、何か自分を不安にさせる未知のものを感じると、潰したくなる感情というわけだ。
「人は、脅威や嫉妬を感じると、攻撃したくなります。自分より、すごい才能だからこそ、攻撃して潰してやりたいと思うのです。批判されたら、チャンスがあります。それをもっと磨き続ければ、才能を爆発させられます。」
私はライターという仕事をしていて、記事を批判されることがよくある。ネットで炎上することもある。その度にどっと落ち込んでしまうのだが、「もしかしたら、執筆した分野で才能があるのかも?」と思うと、ライター業そのものに対しても前向きになれる気がした。
「自己効力感」に素直に従ってみる
人は、何かの課題を前にした時、「自分でもやれる」と確信する場面がある。心理学者のバンデューラは、これを「自己効力感」と名付けた。自己効力感は、モチベーションのスイッチを押してくれる大事な感情。よく、「根拠のない自信がある」と言う人がいるが、そういった人は自己効力感が高いのだろう。
作家の森博嗣は、小説が特別好きなわけでもなく、読むことも書くことも趣味にしたことがなかったという。しかし、ふと「自分の趣味や、やりたいことに使えるお金を稼ぎたい」と考え、バイト感覚で小説を執筆しようと思いついた。そして3日後に小説を書き始め、1週間後には書き上げ、半年後にはデビューしてしまった。
「自分にもやれそう―。これぐらいなら自分でもイケるかも―。こうした思いを抱ける分野があったなら、すぐに自分でもやってみることです。自己効力感に根拠はいらないからです。やれる―と思えばよいだけです。自己効力感を覚えたら、そこには意外な才能が隠れている可能性が大だからなのです。」
本書には、才能の見つけ方、そしてその才能をいかに“爆発”(=ビジネスにつなげて成功する)させるかのヒントが、ふんだんに盛り込まれている。読み終える頃には必ず、「自分にも才能があるかもしれない」と思えるはず。才能のなさを憂う前に、ぜひ手に取ってほしい一冊だ。
(文=尾崎ムギ子)