中村修二『大好きなことを「仕事」にしよう』

中村修二『大好きなことを「仕事」にしよう』


僕は昔から、「自由」であることを大切にして生きてきました(そういう生き方しかできなかったともいえる)。基本的に人に強制されるのが好きではないし、それでは自分自身をベストな状況に保てないこともわかっているからです。

そして、自由にやってみたほうがいい結果につながる場合が多いということも、経験を通じて理解しています。

そんなせいか、自分の考え方を下の世代に伝える機会も多かったと思います。昔から、生き方などについて若い子たちから相談を受けることが少なくないのですが、そんなときにはいつも意識して、「自由にやるべきだ」ということを強調してきたのです。

ちなみにこの場合の「自由」は「好きなこと」に置き換えることも可能だと考えていますので、「自由=好きなこと」と解釈して読んでいただいてかまいません。

好きなことか嫌いなことかでいえば、好きなことをやったほうが気持ちもいいに決まっています。自由に生きたほうが、積極的にもなれるでしょう。

そして気持ちがよければ、自由になれれば、いい結果にもつながりやすい。そういうものだと思うのです。

ただし、この考え方には、絶対に避けて通ることのできない「大前提」があります。ここを無視したのであれば、自由を語る資格すらなくなると考えています。だから自由であることの価値について語る場合、僕は必ず次のことを伝えるようにしているのです。

「自由でいるということは、なんでも自分の思うとおりにできるということ。なんでも自分で決められるということ。でも、忘れてはいけないことがある。自分で決めた以上、そこには責任ものしかかってくることになるということだ。たとえば自分で決めたことによって、なんらかの困難がのしかかってくることだってありうる。だとしたら、その責任は自分で取らなくてはならない。それは義務だ。なぜって、そうしようと決めたのは自分なんだから。つまり、それが自由。決して、“ただ楽なこと”ではないんだよ」

これは僕の持論です。つまり、「自由でいること」「好きなことをやること」は、実はとても重たいことだと考えているわけです。自由でいたいのなら、責任を背負う覚悟が必要。そう表現することもできるかもしれません。

今回ご紹介したい『大好きなことを「仕事」にしよう』(中村修二:著/小社刊)を読んでいたら、若い子と安い居酒屋で飲みながら、そんな主張をしたときのことを思い出しました。

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いうまでもなく著者は、1993年に高輝度青色発光ダイオード(LED)の発明によって時の人となった人物です。特許に関する権利を巡って、長年勤めていた日亜化学工業と裁判で争ったりもしたので、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。ちなみに現在は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授として教鞭を振るっておられます。

子どもに向けて書かれた本書のテーマは、「やりがいのある仕事の見つけ方」。将来どのような道に進むべきか、どのように進めばよいのかということで悩んでいる子たちへのメッセージだということ。

幼少時にまでさかのぼる自伝的な側面もあるだけに、著者がさまざまな人生経験を通じて「自分」を形成していくプロセスがとてもよくわかります。

初版が発行されたのは2004年8月なので、もう13年も経っていることになります。「あの青色発光ダイオードの盛り上がりから、もうそんなに経つのか」と驚きを隠せませんが、それでも鮮度と説得力を失っていないのが、本書のすごいところ。

でも、それは十分に納得できることでもあります。なぜって、人は誰でも、人生のどこかにおいて、「好きなこと」と「仕事」との狭間で悩むものだから。

つまり、ここに書かれていることはきわめて普遍的であり、時代や流行に左右されるようなものではないということです。だから、読者の多くは、ここに書かれていることを共有できるわけです。

さらに、本書には大きな特徴があり、それが全編を貫いています。いうまでもなく、タイトルどおり「大好きなことを仕事にすべきだ」ということ。仕事は子どもにとっての遊びと同じ。子どもの仕事が遊ぶことなら、同じように大人の仕事もドキドキして楽しいものであるべきだという考え方です。

とはいえ無視すべきでないのは、そこには「努力」「責任」「怒り」などが不可欠であるという絶対的事実。先の僕の持論とも重なりますが、ただ「楽しい楽しい♪」とノホホンとやっているだけでは、なんの進歩も望めないのです。

 事実、「苦労しろよ」みたいな押しつけは一切していないものの、本書の端々からは著者自身が生きてきた過程における「努力」「責任」「怒り」の重要性を感じることができます。

さて、そんななかから、今回は以下の文章を「神フレーズ」としたいと思います。

ぼくたちは自分の「仕事」を通じて社会とかかわります。なによりも自分のやりたい仕事を見つけ、一度それを見つけたら、出世や他人の価値観などにまどわされず、自分に正直に生きてください。
(158ページより)

大切なのは、「他人の価値観などにまどわされず」という部分です。こんなシンプルな表現ですが、その裏側には「自分とは違う考え方を持つ人から理不尽な思いをさせられたとしても、屈せず、諦めず、怒りをバネにして努力を続けよう」というメッセージが込められていると感じるのです。

ところで「子ども向け」であることは事実なのですが、実際のところ本書は、大人にも勇気を与えてくれるはずです。人生のどこかで迷ったとき、「こうすればいいんじゃない?」と、さりげなくヒントを与えてくれるような感じで。

 

 『大好きなことを「仕事」にしよう』
中村修二:著

 
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『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』
印南敦史:著

Written by innami atsushi
innami atsushi

印南 敦史(いんなみ・あつし)/作家・書評家・ライター 1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は、「ライフハッカー[日本版]」「マイナビニュース」 「ニューズウィーク日本版」「Suzie」など多くのメディアで連載。最新刊『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社刊)がベストセラー記録更新中。FMおだわら78.7Mhzで 毎週日曜日20:30~21:00(再放送:金曜22:30~23:00)、ラジオ番組「印南敦史のキキミミ図書館」のパーソナリティも。http://book-radio.net

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