『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』出版記念“ゆるゆる漢方家”櫻井大典先生に特別インタビュー!


日々、ゆるゆると更新される、漢方にまつわる内容のつぶやきが大人気で、なんとフォロワー数13万人(!)にのぼる漢方家、櫻井大典先生(@PandaKanpo)。
「菓子パンはごはんじゃない」「全部気圧のせい」などなど、一見ゆるゆるとしたつぶやきも、言わずもがな、しっかりとしたプロの視点に基づく内容。

そのつぶやきの的確さ、親しみやすさで、多くの人を“養生”の世界へといざなう櫻井先生って、いったいどんな人!? 最新刊『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』(小社刊)の発売を記念して、インタビューを敢行しました!

「菓子パンはごはんじゃない」は、自戒を込めて。

――Twitterでのゆるいイメージとはまた違い、さすが先生と申しますか、雰囲気からも非常にきっちりとした印象を受けます。Twitterでのゆるさは、ある程度、意図していらっしゃるんですか?

いえいえ、それが、ぜんぜんきっちりしていないんですよ。
本にも書きましたが、Twitterでの「菓子パンはお菓子!」「菓子パンはごはんじゃない!」なんていうつぶやきも、菓子パンを食べている自分に向けて発信している部分もあるんです。自戒をこめて、といったところでしょうか。
とくに、若いころの食生活がひどかったのですが、そのとき食養生の先生に「君は、食べ物を冒涜している。一つひとつ、感謝して食べなさい」と言われて……。

ただし、その先生には「食養生とは禁止するものではなくて、好きなときに好きなものを食べてもビクともしない身体づくりだ」という名言もいただきまして、それを皆さんにわかりやすく伝えているつもりなんです。ですから、今でもぼく自身、甘いものが大好きですからデパ地下も好きですし、ケーキだって食べますよ! 食べますが、それが養生のための食なのか、楽しみのための食なのかを意識しておくことが大切なんです。

実はすごく“気にしい”で、ナイーブなんです。

――先生も菓子パンを食べていると思うと、さらに親しみが湧きますね(笑)! しかし、メンタル面は非常に安定されているんではないでしょうか? Twitterでのつぶやきや会話の端々、お見かけする佇まいから、そのような印象を受けますが。

いや、それも違うんです。ぼくはすごく“気にしい”ですし、メンタルがナイーブなんです。とても、弱い……(笑)。だからこそ、「そうならないでね」ということを、Twitterや本を通じて、伝えたいんです。
さきほどのお話とリンクしますが、わたしの発信することは食に限らず、自戒をこめた内容が多いんですよ。たとえば最近、天災が多いですけれども、そういうときに「メンタルが弱い状態の人は、(ニュースなど)見たらしんどくなるから見ない方がいいよ」ということをよく言うんですが、まさに「ストレスから離れよ」という意味合いで、自分自身に向けた言葉といえるかもしれません。

――「頑張らなくていい」というメッセージも、くり返し発信されていますよね。

そうですね、「頑張らない」とか「無理しない」ということも、自分自身が弱いからこそ、みなさんに伝えたい言葉なんです。
今でも、常に悩んでいますし、不安でなときもあります。でも、弱いしポンコツだからこそ、同じように悩まれている方に向けて「この教科書(中医学の古典)にはこう書いてあるよ」「こう考えるといいよ」「ぼくも実践中だから、みんなも一緒にやってみよう!」というスタンスなんです。

中医学や漢方の世界を、いかに“ゆるく”伝えるか?

――なるほど、逆に「自分は全然大丈夫! 悩みなし!」という先生では共感できませんし、相談しづらいですよね。ちなみに、先生は漢方の専門家 としてご活躍されるまで、どのようなお仕事をされてきたんでしょうか。

意外に思われるかもしれませんが、実は、音楽業界にいたこともありますし、コンサルティングの会社も経験しているんです。
コンサルの会社では、お店に店長として入り込んでスタッフのテンションを上げるということをやっていたんですが、これはとにかくエネルギーの必要な仕事でした。とてもハードで週に1日休みがとれるかどうか……。若かったのですがストレスも多く、「これでは続かない」と思い、辞めました。
そして、イスクラ(イスクラ産業:プロに漢方相談ができる、大手製薬会社)に入り、そのあと独立して、現職になります。今の仕事についていえば、実はストレスがないんです。
ものすごく忙しいけれど、ストレスにはならない。つまり、やりたいことしかやっていないんですね。

――Twitterは、いつ頃から始められたんですか?

イスクラにいたときです(※アカウントは現在と別)。店長がすごい方でしたから、自分には何ができるかを考えたんです。
今ほどは忙しくありませんでしたから、ブログなども含めて、当時は自分に「書く」ことを課していたんですね。最初の頃は、とてもマニアックな「気とは?」「気を6つのタイプにわけると?」なんてことを書いていたんですけれども、やはり、マニアックな人にしかヒットしない(笑)。
そのうち、少しずつゆるく書くようになりまして、どんどん多くの人に読んでもらえるようになりました。

ゆるく書くということは、もちろん中医学や漢方の専門家からみれば、おかしな部分も出てくると思うんです。でも、「自分になにができるか?」ということを考えたとき、「どこまでデフォルメして、ハードルを下げて、一般の人に(中医学や漢方の世界を)伝えられるか?」ということだと思ったんですね。
結果的に、ぼくの存在意義はそこにあるのではないかと、考えたわけです。

やりたいことは、「0を1に変える」こと

――Twitterのフォロワー数をみれば一目瞭然ですが、実際に今、櫻井先生は、漢方業界を牽引される存在になられています。実際に本も多数出版され、薬局のお客様も増えるなかで、心境の変化はありますか?

漢方って、そもそも値段が高そうなイメージがありますし、「漢方薬局に行ったら買わされそう」と思っていらっしゃる方も多いんですよね。人と話すのが苦手で、話しづらいという方も……。
ただし値段に関していえば、予算は本当にバラバラなんです。子宝相談で「いくらかかってもかまわない!」という人もいれば「3千円しかないんですけど、ちょっと眠りやすくなる漢方を試してみたい」という人もいらっしゃる。風邪薬であれば1~2千円ほどですから、市販の風邪薬を買うのとほとんど変わらないですよね。

ですから、漢方も養生も一切触れたことのない人が、たまたま見かけたぼくのTwitterに興味を持って「冷たいものはダメなんだ。それはなぜだろう?」といった“入り口”に立っていただき、「もしかしたら、私の症状に漢方が効くかもしれない」「この漢方薬局に相談してみようかな?」というところまで導くのが、わたしの仕事だと思っています。
しかも、先ほども申し上げたとおり、ぼくはストレスなく、やりたいことしかやっていないわけですから、結果的に「皆さんの評価をいただけていること=今の自分ができること」というだけなんです。

言うなれば、ぼくのやりたいことは、「0を1に変える」ことでしょうか。
漢方に興味を持っていただき、西洋医学だけでない選択肢があることを紹介します。そして、「もっと専門的に知りたい、相談したい」と思われた方が、地元の漢方専門店なり、ぼくのところを訪ねてくださったら、という思いがあります。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします!

今回の本では、ゆるく元気に暮らすためのいろいろなコツを書かせていただきました。
養生というのは、すべてを完璧にこなすよりも、小さいことでも続けることが大切です。この本をきっかけに、できる範囲で生活に取り入れていただけたら、これほどうれしいことはありません。

本書『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』には、心と身体をいたわる養生のヒントが、ぎっしり詰まっています。症状別・こころとからだの不調の整えかたも初収録。中医学の基礎知識もやさしく解説してあるので、漢方初心者の入門書としてぴったりの1冊です!

先生のTwitterに気づきをもらいつつ、今日からできる「ゆるゆる漢方生活」を、ゆるゆるはじめてみませんか?

撮影:長谷川梓

櫻井大典
年間5,000名以上の相談をこなす漢方専門家。国際中医専門員。アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。
SNSでは、漢方や養生法にまつわる情報を日々発信しており、優しくわかりやすい内容が老若男女を問わず広く人気を呼んでいる。主な著書に『まいにち漢方』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)、監修に『食べる漢方』(マガジンハウス)、『ゆるゆる健康法』(KADOKAWA)などがある。
Twitterアカウント @Pandakanpo