【INTERVIEW】ドラマ『Life 線上の僕ら』に出演する楽駆。純愛物語に挑戦したその心境に迫る。
昨年公開された映画『最初の晩餐』で第34回高崎映画祭・最優秀新人男優賞を受賞した俳優の楽駆。今度は人気BLコミック『Life 線上の僕ら』の実写化ドラマで、白洲迅との純愛物語に挑戦。高校生から大学生、社会人と、大人へと成長しながら描かれる、ふたりの男性の恋愛模様をどう表現したのか。自分に近しいという、夕希という役どころ、そして楽駆自身が考えるこの作品のテーマについて聞いてみた。
撮影/浦田大作 スタイリスト/八木啓紀 文/竹下詩織
――まず、お話を聞いた時の率直な感想を教えて下さい。
お話を頂いたのが昨年末で、原作は読んだことがなかったのですが、同性同士の恋愛を描いている作品の中で、その当事者である夕希という役を演じられると聞いた時は単純に凄く嬉しかったです。この作品の物語は少し特殊で、たった1巻の中でふたりの人生を描いているので、凄くスピード感があるというか、自然と次のページを読みたくなるというか。でも人間模様もしっかり描かれていて、とても感動しました。夕希という役を演じられるのは凄く光栄なことだと思いましたし、自分の中でも挑戦だなと思いました。
――クランクイン前には具体的にどのような準備をしましたか?
『ブロークバック・マウンテン』という同性愛がテーマの映画を観ました。あとは原作を読み込んだくらいです。同性愛ということを意識し過ぎて、ほかの作品などで勉強するということはあまりしないほうがいいのかなと思いました。僕としては、この物語に性別なんて関係ないと思っていて、迅君演じる晃という人間をただ純粋に好きになる、という感覚でした。男性同士という意識は全然なかったですね。夕希も、最初は同性を好きになったという感覚に気づいていないので、あまりそういう性別的なことを意識せずに役に入れたほうが自然かなと思いました。
――役作りで、白洲さんと過ごす時間を増やしたりはしましたか?
顔合わせの日、顔合わせが終わった後にカフェで6時間くらいずっとふたりで話をしました。初対面なのに会話が止まらなくて。人として尊敬出来る“好き”じゃないと、たとえお芝居が上手く出来たとしても、表現出来る幅に多少制限があるんじゃないかなと思っていましたが、迅君は予想通りとても素敵な方で、会った瞬間「あ、好きだ!」って思いました。
――撮影中もずっと一緒に過ごしていたんですか?
迅君とはほぼ一緒のシーンだったので、撮影中もずっと一緒にいました。撮影が終わってホテルに帰ってきた後も、1時間くらい僕の部屋で話すという時間があって、凄くいい関係性だったと思います。どんどん距離感が縮まっていった気がします。
――ふたりでいる時は晃と夕希という役のまま過ごしていたんでしょうか。
迅君自体はわからないですが、僕は最初から、現場では常に夕希としていようと決めていたので、僕は自然と夕希のまま過ごしていました。そのほうが個人的には凄くやりやすかったですし、周りへも接しやすかったというか、夕希という役に救われていた部分が少しあります。
――晃と夕希のふたりのシーンが多かったと思いますが、白洲さんとはたくさん話し合いをしながら進めていったんですか?
あまり話し合いというのはなかったかもしれないです。台本上にないところや、アドリブはふたりで「もうちょっとこうしたほうがいいんじゃないか」と話し合って、あとは監督に任せる部分が多かったです。脚本も原作に沿っているので、例えば台本になにも書かれていないところで原作にあるセリフを言ってみたり、そういった工夫は原作を大事にするためにも取り入れたりしました。
――夕希という役に対して、監督やプロデューサーからこうしてほしいなどの要望はありましたか?
「天真爛漫で、純粋に真っ直ぐでいてほしい」とずっと言われていました。その部分は比較的自分自身の性格に近いなと思います。夕希の、人に壁を作らせないという、その根っこの部分だったり、年齢関係なくいくつになってもあのまんまで変わらないところ、そこは本当に人間として素敵だなと思いましたし、こういう風に過ごせたら人生楽しいんだろうなと思いました。
――同性に好かれるように意識したしぐさなどはありますか?
そういったしぐさは、クランクインの時とか、最初は難しいと思っていたんですが、プロデューサーの方が、僕の演技に対してわかりやすく喜んで下さるんですよ。「じゃあ、これはいいんだ」「こういう表情やしぐさをしたら喜んでくれるんだ」っていうのがわかりやすくキャッチ出来たので、プロデューサーに全幅の信頼を置いていました。こういうしぐさをしたら反応してくれるな、とか(笑)。あとはとにかく原作を見て、しぐさなどを真似していました。もちろんそれに対する晃の反応も意識はしていたんですが、迅君自体が凄く優しい方なので、ずっと優しい目で見てくれていましたね。
――中にはどうやって表現したらいいんだろう、と悩んだシーンもあったんじゃないでしょうか。
クランクインの日に、出会いのシーンと別れのシーンを連続で撮ったんです。それが一番きつかったですね。ほぼ順撮りで撮らせて頂いて凄くやりやすかったんですけど、そこだけは本当にきつかったなと。出会ったばかりの状態から、次は別れるシーンと、大きく感情を動かすのが難しかったです。
――作中では高校生、大学生、社会人、と演じる年齢層も幅広いですね。
晃は歳を重ねるごとに露骨に変わっていくんですが、夕希の良さって年齢によって変わらないことだと思うんです。年をとっても、誰と出会っても、変わらない。ただ晃との関係性だけが変わればいいのかなと。対する晃は年齢によってどんどん変わっていくので、それだけでもふたりの変化として見えるものはあるし、夕希自身は変わらずに真っ直ぐいきました。作品においても、夕希が変わってしまうと一本の芯が通らなくなる気もしていたので。40歳を演じるとなるとメイクで変えていくなどやり方があると思うんですが、この作品は外見とかじゃなくてふたりの物語で見せるので、ふたりの関係性が変わっていけば素直に伝わるのかなと思ったんです。なので、年齢によってそこまで大きく変えたってことはあまりないかもしれないです。
――実際に完成した作品を見た感想はいかがでしたか?
シーソーを漕ぐ場面とか、思わず笑っちゃうシーンもありました(笑)。笑えるしスピード感があるので、あっという間に観れてしまう部分と、しっかり締める部分と、凄くバランスのいい作品になったと思います。1、2話は明るい雰囲気で進むんですが、3話からはガラッとシリアスなシーンも増えて。その落差も原作の良さが出ているんじゃないかなと思います。
――今作も恋愛対象が同性で、自分の経験ににない役を演じられました。役者はそういった自分に経験のないことも求められることが多いと思いますが、普段から意識して取り組んでいることはありますか?
街では人をよく見てしまうかもしれないです。凄く観察していますね。変な人ばかり目に着いちゃうんですけど(笑)。あと最近はおうち時間を利用して、映画をたくさん観ました。『プリズン・ブレイク』を観てる時はずっとハラハラしていて。印象的だったのは『チョコレートドーナツ』という作品ですね。それも同性愛を描いていて、ハッピーエンドではないんですが、とても印象に残っています。洋画を観る時は純粋に物語を楽しむんですが、邦画になると多少仕事の目線で見てしまうというか、自分だったらこうしたい、とか色々考えたりもしちゃいますね。
――この作品に携わって、BLや同性愛というテーマへの意識は変わりましたか。
元々そんなに偏見がなかったのですが、この作品を通してもっとなくなりました。恋愛って人と人なので。たしかに、僕が父と母という男女の関係の間に生まれたのは事実で、その環境で育っているからそれが普通だということもわかるんです。だからといって同性愛が普通でないという訳ではなく、当然人それぞれの価値観があっていいと思います。もし男性同士で付き合っていて子供が欲しいとなった時にどうするか、それこそ養子縁組など色々な方法があると思うので、他の人がどうこう言う問題でもないし、本人同士が幸せだったらいいな、素敵だなと思います。たしかに人よりかは何倍もつらい想いをするかもしれない。でも、そういうつらい想いをしない世の中になっていけたら凄く素敵ですよね。これからの未来がもっと明るくなったらいいなと思います。
――最後に、『最初の晩餐』で第34回高崎映画祭・最優秀新人男優賞を受賞されました。以前のインタビューでも新人賞のお話が出ましたが、実際に受賞されて、今回の経験で何か心境に変化などはありましたか?
より一層背筋が伸びた気がします。評価をして下さったみなさんのためにも、恩返しというか、頑張らなきゃいけないな、と気が引き締まりました。これからもちゃんと地に足つけてやっていこう、と。ずっと、事務所に行く度にショーケースに入っている先輩達の受賞歴を見て、僕も、何かひとつでも、目に見える形で返せたらいいなとは思っていました。だからとても嬉しいです。
衣裳協力:ブルゾン¥42,000、カットソー¥18,000(ともにMASU/エムエー エス ユー<SOHKI/ソウキ>)、パンツ¥52,000(Maison MIHARA YASUHIRO<メゾン ミハラヤスヒロ>/Maison MIHARA YASUHIRO)、その他スタイリスト私物
●プロフィール
楽駆(らいく)
1996年11月30日生まれ、大分県出身。2017年、所属事務所のワークショップオーディションを経て、俳優活動をスタート。19年出演作にドラマ・映画『女の機嫌の直し方』、ドラマ『ハイポジ』、映画『最初の晩餐』『地獄少女』など。『最初の晩餐』で第34回高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞。
●作品紹介
(C)「Life 線上の僕ら」製作委員会 (C)常倉三矢/芳文社
『Life 線上の僕ら』
監督:二宮崇(オフィスクレッシェンド)
出演:白洲迅 楽駆 小島藤子 土居志央梨 長田奈麻 廻飛呂男 奥山佳恵 ほか
脚本:山本タカ(くちびるの会)
原作:常倉三矢『Life 線上の僕ら』(芳文社刊)
Rakuten TV、ビデオマーケットにて先行配信(全4話 毎週金曜正午更新)
http://www.vap.co.jp/life/