「ほとんど男子校」だった大学で求められた、「女子」としての役割 #それでも女をやっていく

「ほとんど男子校」だった大学で求められた、「女子」としての役割 #それでも女をやっていく



 

会社員、フリーライターであり、同人ユニット「劇団雌猫」として活動するひらりささんが、「女」について考えるこの連載。
今回は社会で求められる「女」の役割について、ひらりささんが違和感を抱き始めた、
大学時代の経験についてつづっていただきました。

 


 

社会において「女」が求められる役割を実感したのは、大学に入ってからだった。

都内の中高一貫の女子校から進学したのは、東京大学教養学部の前期課程。東京大学では1〜2年の間は、この教養学部前期課程に所属して一般教養科目を学び、その後、成績や志望に応じて専門学部への進学が確定するシステムになっている。わたしは前期課程の中でも、学生の大半が法学部に進学する「文科一類」に合格していた。学生たちは、この科類にあわせたカリキュラムと、選択した第二外国語に応じて分けられたクラスを基盤に、大学生活を歩む。小学校以来の共学ライフということで、予備校でも一切男ともだちを作っていなかったわたしは、初々しく緊張していたのだが……振り分けられた自分のクラスは、想像とは違った未知のコミュニティだった。文科一・二類合同の中国語クラスの男女比は5:1。30人のクラスに、女子学生はわずか5人という「ほとんど男子校」な世界が待っていた。

実のところ、この比率は、東京大学の学部全体の男女比とそこまで変わらない。「東京男子大学」と揶揄されるのを聞くこともあったから、入学前からそれなりにも覚悟していた。しかし科類ごとにはそこそこ偏りがあって、例えば文三フラ語は男女同数のクラスが多く、特に男性が多い科類のマイナー選択である理一ロシア語には、女性が1人というクラスもあった。

同数であれば、役割を担いたい人だけが「男子」「女子」をやればいいし、むしろ女が1人ならば、他の人たちは彼女を「女子」以上に彼女個人として見るのではないか。それはわたしの勝手な推測に過ぎなかったけれど、わたしにとっては自分のいる「男女比5:1」の世界が、いちばん生きづらいように感じていた。大枠のノリが「男子」によって決められているときは大人しく黙っていることを求められるのに、飲み会の頭数だったり、文化祭の店番シフトだったり、会話においての受け役だったりという時には、「女子」の存在感を求められるのだ。

1年生のかなり序盤、クラス飲み会でビンゴ大会が行われたときのことが思い出される。

「5位の景品は……ボックスティッシュ!って、おい〜〜〜(笑)」

何がおかしいのか、クラスの中でも、同じ中高一貫男子校出身の人間が数人爆笑しだした。中には、女子の方を見遣って忍び笑いしている者までいた。上品な読者の皆様のために念のため説明しておくと、「マスターベーション用」という意味合いでボックスティッシュが賞品に選ばれていたのだった。「わかるかな〜」「いや〜」と声を潜めている彼らを尻目に、その場を去れたならどんなによかっただろう。

まずそうした下ネタで笑う空気も嫌だったが、そこに多分にあった男だけの内輪感、その内輪を盛り上げる「装置」として使われている外野としての自分、に激しい嫌悪感があった。怒り、と言ってもいいかもしれない。金輪際クラスの飲み会に参加するまい、と堅く誓ったし、実際彼らも「ノリが悪くてもっさりした方の東大女子」には本当は興味がなかったと思うのだが、「今度の飲み会、他の女子来られないらしいんだけど、平松さんどう?」というお伺いは来るのだった。

彼らは多分、全然みんな、悪い奴らではなく、「そういう風に育っちゃった」からそうだったのだろう。わたしも不快なときに何が不快かを言わなかったのが、悪かったのかもしれない。しかし、どのテニサーに可愛い子が多いかというような話ばかりしていて、クラスの女子にもうっすら「アリ」と「ナシ」の線引きをしている人たちと、何かわかりあいたいと思っていなかった。ちなみに、法学部に進んだ後も折々ではクラスの飲み会があり、卒業式の当日には、キャンパスそばの居酒屋でクラスでの二次会があった。これで最後だろうし……と、誓いを破って参加したら、「え〜本当は○○と付き合ってんじゃないの〜〜〜?」と囃し立てられる事件が発生したのだが、1年の時と違い、飲み会を退出することができたのは進歩だっただろう。卒業後に会った男性クラスメイトは一人もいない。

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Written by ひらりさ
ひらりさ

ライター・編集者。平成元年生まれのオタク女子4人によるサークル「劇団雌猫」メンバー。 劇団雌猫としての編著書に、『浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。 個人としてもアンソロジー同人誌『女と女』を発行するなど、女性にまつわるさまざまなテーマについて執筆している。

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