大人の遠足、ぶどうを狩りに

大人の遠足、ぶどうを狩りに


残暑がほんの少しだけやわらいで秋の気配を感じるようになる頃、毎年楽しみにしているぶどう狩りに出かける。

その年によって違うが、だいたい9月の半ばぐらいまでに親しい友人と声を掛け合って出かけるのが、ぶどうの名産地で知られる山梨県勝沼にある朝日園さんだ。通い始めたのはもう5年ほど前だろうか、くいしん坊仲間のひとりに教えてもらったのがきっかけだった。
朝、東京を出発して中央高速を走ると順調に行けば2時間ほどで勝沼に到着する。インターチェンジから10分ほどで緑豊かなぶどう畑が連なる風景が目に入ってくる。

それだけでもうわくわくしてしまうのだが、お楽しみはゆっくりと。まずは腹ごしらえを。朝日園からもほど近い場所にある原茂ワインという小さなワイナリーに立ち寄ってランチをするのもいつもの楽しみなのだ。

ぶどうの葉が生い茂った蔵を改造したお店は1階にワインショップ、テラスからワイン棚を見渡せる2階にはのんびりランチが楽しめる居心地のいいスペースが設けてある。ランチメニューはプレートに何種類もの野菜のマリネやオムレツ、ハムやソーセージのシャルキュトリー、美味しいパンが盛り込まれた一品やじっくり煮込まれたチキンのスパイスカレーなども(ただ今年はコロナ禍でメニューは少し変わっていた)。

もちろん、ここで作ったワインを楽しむことができるのだが、運転役の私はいつも搾りたてのジュースでがまん。その代わり、1階で自慢のワインを何本か購入している。ところが、今年このカフェが10月末で閉店するとのこと。ここでのランチがぶどう狩りツアーをさらに充実したものにしてくれていたから、残念で仕方がない。

なげいていても仕方がないので、ぶどう狩りツアーの続きを。さて、いよいよ本日のメインイベントであるぶどう狩りがスタート。

朝日園はぶどう栽培歴54年のお父さんと3代目になるご子息との家族経営。観光用のぶどう園はたくさんあるが、この朝日園は他のぶどう園とは一線を画す品質と収穫量を誇る。日当たりのいい場所にたわわに実ったぶどうたちはどれも傷ひとつない一級品ばかり。ぶどう棚の下に行き、実際に目の当たりにするとその立派さに圧倒される。15センチはある大きな房には大粒の実がぎっしりと実を寄せ合っている。

透明感のある淡いグリーンの実が葉っぱを通して差しこむ日差しにキラキラと輝く様子はただただ美しいのひとこと。ぶどう棚の下にいるだけで、日々のストレスがすっと消えていつのまにか元気になっている。持ち重りのする大きな房を落としてしまわないよう、手で支えながら慎重に蔓にハサミを入れて切り離していく。パチンと切り離した立派な房を眺めながら思わずにんまりしてしまう。自分で切った蔓は市販のものよりもずっと長くて、その長さが自分で収穫した証明のような気がして、なんだかとてもうれしい。大きなカゴいっぱいにして収穫の喜びを味わう。

最後に重量を計ってもらって会計するのだが、大量買いしても驚くほどのお値打ち価格にも改めて感動する。お裾分けする分、自分の分に分けた箱をトランクに詰め込んで大満足で家路につくのがいつものこと。

新鮮なシャインマスカットは感動ものの美味しさだ。ひとつぶ、またひとつぶと手が伸びて、大きなひと房もぺろりと食べきってしまう。そのまま食べるのがいちばん美味しいのはまちがいないが、せっかくたくさんあるならあの手この手で存分に味わい尽くしたい。

まずは粒をひとつひとつバラバラにしてジップロックに入れて凍らせた冷凍ぶどう。まさにリアルアイスの実といった趣で、凍った実を口に放り込むとシャリッと冷たくてたまらない美味しさ。これがあるとお風呂上がりに至福の時間を楽しめる。

大粒の実を半分に切って、ホワイトバルサミコとオリーブオイル、塩胡椒で和えてからブッラータチーズと合わせたカプレーゼも簡単でしゃれた一品だ。ぶどうを発酵させて作るバルサミコだから合わない訳がない。グリーンのシャインマスカットには軽やかなホワイトバルサミコがバランスがいい。ぶどうの味が濃くなってまろやかなブッラータチーズと相性抜群。

和食のアレンジなら、白和えがおすすめだ。豆腐に練り胡麻を入れて滑らかに練った和え衣で作る白和えに柿やいちじくなどのフルーツを入れるが気に入っているのだが、ねっとりとやわらかな和え衣とぱちんと弾けるシャインマスカットはとてもよく合う。みずみずしくて甘じょっぱくてちょっとおつな味わい。

ちなみに和え衣はしっかりと水切りした絹ごし豆腐1/4丁をジップロックに入れ、練り胡麻大さじ1、砂糖大さじ1/2、煮切ったみりん大さじ1、薄口しょうゆ大さじ1弱を練ったものを加えてなめらかになるまで揉むとすり鉢を使わなくても簡単に和え衣ができる。そこにマルカルポーネチーズか生クリームを大さじ1ほど加えるとさらにまろやかになってフルーツとよく合う。

他にもカリッと香ばしく焼いた鶏モモ肉とソテーしたきのこを紫玉ねぎとワインビネガー、オリーブオイルで和えたサラダも毎年作るお気に入りの一品。

このようにクセのないシャインマスカットはさまざまな料理にアレンジしてもしっくりなじんでくれるのがうれしい。シャインマスカットの旬は10月のなかばまでだそう。まだまだ季節は始まったばかり。素晴らしい自然の恵みを愉しみにシルバーウィークにでも足を運んでみてはいかがだろうか。

 

*次回は10月12日(月)更新予定です。

 

arikoの食卓

 『arikoの食卓 -もっと食べたい-

arikoの黒革の便利帖
ariko%e3%81%ae%e9%bb%92%e9%9d%a9%e3%81%ae%e4%be%bf%e5%88%a9%e5%b8%96%e5%b8%af%e3%81%82%e3%82%8ar

arikoの食卓 ~小腹がすいたら~

Written by ariko
ariko

CLASSY.、VERY、HERSなどの表紙やファッションページを担当する編集ライター。日々の食卓をポストしているInstagramが、センスあふれる美味しそうな写真と食いしん坊の心を掴む料理で話題に。現在、フォロワー数は131,000人を突破。Instagram@ariko418

»https://www.instagram.com/ariko418/

»この連載の記事を見る