
冷たいスープで涼を取る
今年は夏が来ないのかと思うほど長かった梅雨が明けたとたん、今度は熱中警報が出るほどのいきなりの猛暑が続くこの夏。急な気温の変化に身体もなかなか付いていかない。食いしん坊で食欲不振などということはめったにないのだが、こう毎日暑い日が続くとさすがに食べることがしんどくなることもある。
そんなこの時期、毎年楽しみにしているメニューがある。それは三田にあるフレンチレストラン、コートドールの梅干しと青紫蘇の冷製スープだ。青紫蘇と梅干しにトマトの果汁とアボカドを加えてミキサーにかけたという鮮やかなグリーンが白いうつわに映える美しい一皿。スプーンですくって口に運ぶとなんとも爽やかな香りが鼻を抜け、ほのかな酸味が夏バテでくたびれた胃袋をみるみるうちに生き返らせてくれる。
浮き実にした糸瓜のしゃきしゃきとした食感もさらにこのスープの美味しさを引き立ててくれるアクセントだ。ひと口ごとに食欲が復活していることに驚く。このスープを頂くたび、まさに食べる点滴だなあと実感するのだ。
冷たいものばかり食べていては身体がかえって疲れてしまうが、食事の始まりの一杯の冷たいスープは蒸し暑かった一日を過ごした身体へのなによりのご褒美ではないだろうか。サーモセンサーで見たら真っ赤になるほど熱せられた身体をひんやりとしたひと口が穏やかにクールダウンしてくれる。
じゃがいものポタージュを冷たくしてコンソメのゼリーを添えたヴィシソワーズは子どもの頃からの大好物。改装前のホテルオークラにあった庭園を望むテラスレストランの夏の風物詩、パリソワールはたっぷりのコンソメゼリーをまとったヴィシソワーズ。しみひとつない白いテーブルクロスのうえに脚付きグラスに注がれて、目の前にサーブされた姿の晴れがましさと言ったら。
ヴィシソワーズと同じように、冷製ポタージュは旬のとうもろこしやかぼちゃでも簡単に作ることができる。少量のバターとやわらかくなるまで煮て、塩胡椒で味を調えてミキサーやバーミックスでがーっと粉砕するだけでベースができるので、それを冷やしてから牛乳で割るだけ。
とうもろこしなら芯も一緒に煮ると香りも味もより濃くなって美味しくなる。丁寧にするならザルで漉せば滑らかな舌触りが楽しめる。
数年前、イタリア料理のレッスンで習って以来、夏のあいだ、冷蔵庫に常備しているのはスイカのガスパチョだ。トマトにセロリやパプリカ、きゅうりなどを混ぜたガスパチョもさっぱりと清涼感のあるスープだが、そこにスイカが加わることで爽やかな甘さが加わってさらにすっきりと優しい味わいに。習ったときよりスイカの量を増やして我が家流の味を楽しんでいる。
フルーツとトマトの組み合わせといえば、ほかにも春の終わりに登場する小粒のいちごを冷凍したものとフルーツトマトもおすすめ。冷凍したイチゴのおかげでまるでスムージーのようなひんやりとした食感が楽しめる。そこに半割りにしたブッラータを浮かべれば、まるでフレンチレストランの前菜のような一品が簡単に完成する。
ちなみにフルーツのスープはデザートにしても口当たりがよく、暑い時期にぴったり。よく熟したメロンをやはりミキサーにかけ、レモン汁を少々加えたものに、ゆるめに作った杏仁豆腐を浮かべれば、つるりと舌触りもよく、お腹がいっぱいでもするりとお腹に収まる。今年はメロンの当たり年なので、お買い得コーナーに並んでいるのを見かけたらぜひとも作ってみていただきたい。
最後にスイカのガスパチョの作り方を簡単に。分量はミキサーの容量がいっぱいになる感じだ。密封できるガラスのジャーに入れて冷蔵庫で冷やしておけばいつでも3~4日は楽しめるのでたっぷり作っておくのがおすすめ。
材料
皮と種を取り除いたスイカ300g、トマトジュース300 ml、きゅうり1本、セロリ1/2本、パプリカ1個、たまねぎ1/6個、オリーブオイル大さじ4、バゲット、もしくはフォカッチャの白い部分5㎝分、ホワイトバルサミコ大さじ2、塩小さじ1強、ディルやチャービル、ミントなど好みのハーブ。
作り方
スイカはひと口大に切り、きゅうりは皮をむき、セロリは筋を取ってひと口大に切る。パプリカは種と芯と取ってひと口大に切る。パンの白い部分だけをちぎって、ホワイトバルサミコに浸しておく。すべての材料をミキサーに入れてなめらかになるまで粉砕する。
よく冷やして、うつわに注ぎ、好みのハーブを散らし、オリーブオイル(分量外)をたらす。
お盆も過ぎれば、夏も終わりのような感じがするが、まだまだ蒸し暑い日が続きそうなこの夏、マスクのわずらわしさも加わって、体感温度はますます上昇。冷たいスープでビタミンと栄養補給して少しでもさわやかに乗り切りたい。
*次回は9月14日(月)更新予定です。