わたしが女子校を礼賛したくない理由 #それでも女をやっていく

わたしが女子校を礼賛したくない理由 #それでも女をやっていく


いずれにしても、女子校という空間は、わたしの知る限り、清くも正しくも美しくも、純粋培養の温室でもない。すべての学校と同様に、自我を形作りつつあるいきものたちが生傷だらけになって、関係を醜く失敗していく、血まみれの野戦場だった。……あ〜、こうやって書いちゃうと、もう完全にノスタルジックになっちゃうな。厭だな。「女子校あるある」みたいな美化コンテンツが本当に嫌いなんだけどな。結局わたしは、あの頃のわたしたちの厭な部分にすら愛着を持っていて、その一方で「マリみて」への憧れも捨てきれない。アンビバレンツな自意識の狭間で勝手に苦しみ、「女子校礼賛」できる人々の素直さに八つ当たりしているだけなんだよな。同窓会には行かないし、結婚式にも行かないけど、わたしたちを「わたしたち」だと言ってしまうし。ふと思い出したけれど、ある年、同窓会の幹事から「来れない人も近況を教えて!」という連絡が来たのに「生きてます」とだけ書いて送ったことがあった。後でまとめられた近況一覧で、「〜〜大学で〜〜の研究をしています」「二児の母親をしながら〜〜で働いてます!」みたいな明るい言葉が並ぶなかに、一言一句わたしと同じこと書いてる女が結局5人くらいいて、あれはかなり恥ずかしかった……。

同窓会には行かないし、結婚式にも行かないけれど、社会に出てから知り合った、何となくうまが合う女性が実は同じ中高だった、ということはかなりあった。「フリーターしながらバンギャやってたけど24歳で大学入って、27歳で就活します」というブログエントリが回ってきて、面白いな〜と思ってよくよく読んでみたら、あの、わたしがやめてしまった運動部の、「前代未聞」が口癖の中二の先輩だったことまであった。ちなみに、昨年ロンドンに短期留学したときに、全財産をすられてしまったのだが、現地で現金を融通してくれたのも、やはり同じ運動部の、優しくて憧れていたが挨拶しかしたことのなかった高二のキャプテンだった。中一のわたしに、「あの先輩とTwitter相互フォローだよ」「あの憧れの先輩にロンドンでお金を借りるよ」と言っても絶対に信じないだろう。卒業後の彼女たちだからこそ、分かりあえて、理解できた部分があった。それはやはり、学校が戦場だったと同時に、結局は温室だったということでもあるのだろう。

こんなに悶えながらも、女子校のことを書こうと思ったのは、本当は、最近ヒットしている女子校漫画『女の園の星』(和山やま)を紹介したかったからだ。気怠い国語教師・星の目を通して描かれる日常には、女子校の楽しさ、悪どさ、くだらなさが絶妙に表現されている。「女子校あるある」に厳しいわたしの胸にも、素直に染み入った。インタビューなどでの発言を読む限り、和山やま先生が女子校出身ではないことには驚くばかりであるが、だからこそ描ける距離感なのかもしれない。このエッセイを読んで「うだうだうるせ〜な」と思った人は、お口直しに読んでみてください。

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Written by ひらりさ
ひらりさ

ライター・編集者。平成元年生まれのオタク女子4人によるサークル「劇団雌猫」メンバー。
劇団雌猫としての編著書に、『浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。
個人としてもアンソロジー同人誌『女と女』を発行するなど、女性にまつわるさまざまなテーマについて執筆している。
初の単著『沼で溺れてみたけれど』(講談社)が発売中。

»https://twitter.com/sarirahira

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