ジャンニのパスタ

ジャンニのパスタ



イタリア在住のイラストレーター・マンガ家のワダシノブさんが、
イタリアの暮らし・文化・人などの情報をお届け!
今回はイタリアの家庭におけるパスタ事情についてご紹介します。


(イラスト:ワダシノブ)

イタリアに来てすぐ、家の準備ができるまでの数ヶ月間、夫の実家で暮らしていた。日本での母の和食三昧から、突然に夫の父ジャンニ(仮名)による三食イタリアンになったのだ。

ジャンニの作る昼ごはんは、だいたいパスタでたまにリゾットだった。毎日それをアントネッラという、金髪の身振りの大きな女性が進行する料理の対決番組を見ながら食べた(ちなみに、この料理対決番組は素人とシェフがペアになって、赤チームと緑チームとして時間内に競うというもの。賞品もなく、「赤(緑)の勝ちよ!ブラボ!」とアントネッラが叫んでいるうちに番組はバタバタ終わる)。

料理担当の夫の父、ジャンニは料理がうまく、毎日違うパスタを作ってくれた。

毎日違うパスタといっても、決して凝ったものではない。トマトのパスタ。じゃがいものパスタ。カボチャのパスタ。季節の野菜とニンニク、たまにケッパー(イタリア語だとカッペリ)、もしくはツナかパンチェッタ(厚切りのベーコン)が入る。

驚いたのは、ジャンニはパスタに野菜を1種類しか使わないことだった。「ついでにこれも」がない。

「パスタは米」くらいに考えている私は、ありとあらゆる野菜を入れてパスタを作る癖がある。ほうれん草と茄子と玉ねぎとベーコンを全部炒めて、そこにスパゲティを入れる。チャーハンの米をパスタに置き換えたのが私のパスタだ。

だけど、ジャンニは違う。トマトならトマト。茄子なら茄子。カリフラワーならカリフラワー。それだけ。買い物も自分でするジャンニは旬の野菜しか買わない。だから、毎日、旬の野菜1種類だけを使ったパスタだった。

作り方を聞いても驚くほど簡単で。「野菜を茹でてパスタとあえる」か「オリーブ油で炒めてあえる」このどちらかの答えだった。

つい、あれもこれも足りない気がして、何かを加えてしまう私だけど。美味しいものは足し算しなくていいとジャンニから教わった。特別な何かでなくて、スーパーで買える野菜でも、旬のもの、できれば地元のものを買えば美味しいものを簡単に作れる。まぁ、ちょっと時間はかかるんだけどね。


Written by ワダシノブ
ワダシノブ

イラストレーター・マンガ家。広島県生まれ、イタリアのトリノ在住。
日本で出会ったイタリア人パートナーの帰国に付いて、2007年からイタリア生活を始める。
イラストのほか、noteやPodcastでイタリア生活や趣味について発信している。
X(旧Twitter) @shinoburun
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