体型に劣等感を持たないで! 「手作り服」ですべての人を美しく【後編】


「誰かの物差しで決められた『正しさ』に自分を当てはめようとすると息苦しい。
まるでパツンパツンのスキニーを無理してはいている時みたいに」――。

インタビュー前編では、かつて「家庭科3だった」にもかかわらず、今ではカットソーなどのインナーからアウター、ボトムスなどの普段着はもちろん、セレモニーやオケージョンまで、なんと、ワードローブすべてが手作りだという、イラストレーターの津田蘭子さんに「手作り」の楽しさについて語っていただきました。

後編となる今回は、『家庭科3だった私が365日、手作り服で暮らしています。』を出版された津田さんに、「自分サイズの型紙だからこそ可能になる、すべての人の美しさ」などについて、特別にお話をうかがいます。


撮影:中島千絵美

 ――S、М、Lでもない「自分サイズ」の型紙から服を作ることは(※本では100%「自分サイズ」の型紙の作り方を紹介)、一見面倒なことのようにも感じますが、読者からは「自己肯定感が上がった!」という嬉しいお言葉があったとか! いま、さまざまな体形の、それぞれの美しさを肯定しようという社会の流れがありますが、ぜひ、津田さんのお考えをお聞かせください。

津田:理想体重や理想体型というものを鵜呑みにして、自分に劣等感を持ってしまうのは、とても残念なことですよね。かく言う私も、自分の体型が嫌いで、とくにお尻と太ももには子どもの頃からコンプレックスがありました。カッコよくパンツを履きこなしたいと思っても、なかなか自分の思うようなパンツには出会えませんでした。

一番苦労したのは、スキニーパンツが流行った時期でした。私は絶望的にスキニーが似合わない体型だったのです。しかしながら、世の中は一億総スキニー時代で、その流行に乗っていないとなんだか浮いてしまう……。また、実際に売られているパンツも、ほとんどがスキニータイプのパンツでした。毎日、パツンパツンのジーンズをはきながら、自分の体型がダメだからパンツが似合わないんだ、という劣等感を抱いて過ごしていたことを思い出します。
その頃に比べると、「これこそが流行!」という画一的な考えは、今ではほとんど感じなくなりましたね。多様性という考え方が広がってきたという空気も感じます。流行やサイズにとらわれず、自分の好きな服、似合う服を作って着れるようになってからは、自分の体型がダメなんだと思うことはなくなりました。私がダメなんじゃなくて、服との相性が悪かっただけ。要はマッチングの問題だったんです。

自分に劣等感を持って生きていたら、人生100年時代は長すぎる! 誰かの物差しで決められた「正しさ」に自分を当てはめようとすると息苦しい。まるでパツンパツンのスキニーを無理してはいている時みたいに。「みんなちがって、みんないい」ですよね。それは、自分に対してもそうだし、自分以外の人に対してもそういう気持ちでいたいと思っています。


撮影:中島千絵美

――新刊では、トップス、パンツ、スカート、それにアウターと、どれも「着回し」しやすいアイテムばかり紹介されていますが、強いて言うなら、まずはどれから作ってみたらよいでしょうか? また、津田さんご自身の“思い入れ”のあるアイテムも教えてください。

津田:今回は、袖付きの服の作り方というのが、大きなテーマです。「袖を型紙から作るにはどうすればいの?」という私なりの答えを紹介しています。なので、まずは、袖付きのプルオーバーを作ってみていただきたいです。袖がつけられるようになれば、もう季節関係なく手作りの服が楽しめるようになりますから。
また、思い入れのあるアイテムとしては、パンツ。お尻と太ももにコンプレックスがある私は、本当はスカートの方が体型カバーができるのでしょうが、好きなんですよ、パンツが。今までいろんな形のパンツを作ってきましたが、その中でも着回し力抜群のテーパードパンツを紹介しています。私のワードローブの中でも出番の多いアイテムです。


撮影:中島千絵美

――ズバリ、「手作り服」の醍醐味について、読者の皆さんにメッセージをお願いします!

津田:世の中にはたくさんの服が溢れています。だけど、「私に似合う形」「私にぴったりのサイズ」「私の好きな色」を探すと、なかなか理想的な一着に出会えない。私も、1日中街を歩き回って、結局既に持っているような服を買って帰る、なんてことが昔はよくありました。
だったら、その1日を使って、服作りをしてみるというのもアリなのでは?「作る」という選択肢が増えると、服を選ぶ楽しみが一つ増えます。また、作った服を誰かに褒められる→話題が膨らむ→さらに楽しくなるという、ハッピーの無限ループに!

服作りは醍醐味だらけです。もしも、「私も作ってみたい」と思ったら、ぜひチャレンジしてみてください。もしかしたら、新しい世界が待っているかもしれませんよ。

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365日、手作り服で暮らしています。
津田 蘭子:著

◆津田蘭子(つだ・らんこ)
熊本市出身。武蔵野美術大学短期大学部卒。2001年からフリーのイラストレーターとして雑誌、書籍、広告、webなどのイラストを多数手がける。毎日着ている洋服は100%手作り服。年間100着以上の服を作っている。著書に「今日もネコをいただきます。」「家庭科3だった私がワードローブ100%手作り服になりました。」「家庭科3だった私がバッグも帽子も小物も100%自分サイズで手作りしました。」(すべて小社刊)「その服捨てるのちょっと待った! リメイクしたらオンリーワンができました。」(JTBパブリッシング)がある。ブログ「ねこもしゃくしも」では、ハンドメイドの服や小物の数々を発表し、人気を博している。
HP:https://blog.goo.ne.jp/t-ranko