健康意識が高まる漢方コラム:啓蟄(3/6頃)の過ごしかた

健康意識が高まる漢方コラム:啓蟄(3/6頃)の過ごしかた


人気の漢方専門家・櫻井大典先生に、季節「二十四節気」に合わせた中医学について学ぶ、心と身体のための「かんぽう歳時記」。

中医学は「季節の養生」と言われるほど“こよみ”を大切にしています。
そこで、この二十四節気ごとに、おすすめの食材(パワーフード)や養生法などを、たっぷりとご紹介!

数千年という歴史に裏づけられた、中医学の“知恵”を学びながら、日本の美しい四季おりおりを、もっと元気に、もっとたのしく、過ごしてみませんか――?

第18回は、「啓蟄(3/6頃)」です。

 

「啓蟄(けいちつ)」って、どんな季節なの?

うららかな春の陽気に誘われて、冬ごもりをしていた虫(=蟄)や動物たちが目覚め、地中から出てきて(=啓)、活動を始めます。温かさを感じる日が増えていきますが、そのぶん朝夕の気温差も激しく、その変化に対応するため、心身ともに、強いストレスかかる時期でもあります。

人間の身体は気温に合わせて毛穴を広げたり閉じたりと、細かく“セッティング=調整”をくり返しますが、気温差が激しいと、その調整に混乱が生じ、結果として、それらのコントロールを司る「肝」に大きな負担がかかることに……。この時期は、イライラ、ソワソワ、憂鬱などメンタル面の落ち込みが見られやすくなります。養生のポイントは、そんな「肝」の働きを助ける「滋陰補血(じいんほけつ)」。食べ物で、身体にうるおい、水分、血液を、しっかりとチャージしていきましょう。

(※)「五行論」に基づく、「肝、心、脾、肺、腎」の5つを「五臓」といいます。いわゆる「五臓六腑」の五臓にあたり、肝は春、心は夏、脾は長夏(梅雨)、肺は秋、腎は冬に活発に動くとされています。

 

「啓蟄」のパワーフードは?

「啓蟄」の頃におすすめの食材(パワーフード)は、ズバリ、「ほうれん草」! 血を増やす“補血”食材として優秀なほうれん草は、内蔵の働きをスムーズにして、血のめぐりを改善してくれます。

(イメージ:写真AC)

そこで、“補血”作用のあるほうれん草を、同じく“補血”作用のある「黒ごま」と、「肝」によい酢で和えた「ほうれん草のごま和え」はいかが? 黒ごまがなければ、白ごまでも◎。白ごまには、うるおいを補う“滋陰”作用があります。

また、もろもろチャージしたいこの時期にピッタリなのが、「うずらの卵」。平性のうずらの卵は、五臓すべてを補い“気”と“血(けつ)”をチャージする、スーパー食材。アンチエイジングにも効果的で、その栄養価は鶏卵より優れているとされるほど! 脇役のイメージが強いかもしれませんが、ぜひ、1食5〜6個を目安に、こまめに摂ってみてください。うずらの卵を主役にした1品なら、「小松菜とうずらの卵の炒め物」がイチオシ。うずら卵の水煮と小松菜を一緒に炒め、醬油で味をととのえたら、鰹節をぱらりと乗せてできあがりです。

(※)「五行論」に基づく、食べ物が持つ5つの性質「寒、涼、温、熱、平」を、「五性(五気)」といいます。その食べ物を食べたときに、体内で身体を温めるか、冷ますか、あるいは寒熱のかたよりが起こらないかによって分類され、いずれにも属さず、かたよりのないものが「平性」となります。

 

「啓蟄」の頃の、心と身体の状態は?

冒頭でもお話したように、「肝」のトラブル――イライラ、ソワソワ、憂鬱など――に見舞われやすい頃ですが、同時に、花粉症などのアレルギー症状に悩まされている人が多い時期。
中医学では、身体の表面にある「衛気(えき)」と呼ばれるバリア機能が不足すると、花粉症などのアレルギー症状が悪化すると考えます。また、元気がない、疲れやすい、声が小さくなる、汗をかきやすいなども、同じく「衛気(えき)」の不足が原因でみられる症状です。

(イメージ:写真AC)

そして、鼻水、涙などの分泌物がたくさん出るという人は、甘いもの、冷たいもの、水分などの摂りすぎに心当たりはありませんか? たとえば、バレンタインにチョコレートを食べすぎた人は、この時期、花粉症がひどくなっている可能性も……。甘いものや冷たいもの、あるいは乳製品などの摂りすぎなどは、「湿」と呼ばれる分泌物を溜めやすくなってしまいます。

では、どのような過ごし方(養生)をすればよいのでしょうか――?

 

「啓蟄」の過ごしかた(養生)は?

花粉症に悩まされている人は、炎症を鎮めるためにも、ぜひ、野菜を多く摂るようにしてください。「春の皿には苦味を盛れ」という食養生のことわざがありますが、レタスやタケノコ、ミョウガなど、少し苦味のある野菜がとくにおすすめです。
また、この時期、気軽にできる養生がティータイム。ぜひ、少し苦味のある緑茶、菊花茶、ミントティーなどを飲みましょう。緑茶にミントを混ぜるなど、お茶をミックスさせて楽しむのもいいですね。

そして、花粉症などの炎症を緩和するためには、少しでも休むこと。ゆっくりすることは中医学的にも春の大切な養生ポイントですから、休みの日はしっかり休むようにしてください。なかなか休めないという人は、スマホやテレビなどから離れ、静かに目を瞑って深呼吸を。また、睡眠もとても大事なので、悩みなど一切の“考え”を寝室に持ち込まないよう、努めましょう。

 

「啓蟄」の中医学的・たのしみごと

もうすぐ、春のお彼岸(3/18から3/24)ですね! 春と秋の2回あるお彼岸は、此岸(この世)と彼岸(あの世)がもっとも近づく時とされ、ご先祖様の墓参りなどをする人も多いのでは――?

そんなお彼岸に欠かせないのが、ぼたもち! ちなみに、ぼたもちとおはぎは、小豆ともち米で作られた同じ和菓子ですが、牡丹の咲く春に作られたものをぼたもち、萩の咲く秋に作られたものをおはぎと呼ぶのだそうです。

(イメージ:写真AC)

小豆は、疲労とむくみに効果があり、中医学的には「赤小豆(せきしょうず)」という生薬として処方されることもある食材。とくに大切なのは、小豆を煮るときに出る汁! むくみがある時には、50gの小豆を1ℓの水に浸けて、とろ火で5~10分。これを1日2回(1回150㏄)飲んでみてください。妊婦さんのむくみにもよく効きますよ! ただし、病気などでカリウム制限をされている方は避けてくださいね。

 

お彼岸に小豆を食べるのは、小豆の“赤色”に関係があることをご存知ですか? 神社の鳥居が赤いのも、中国で春節に赤色を飾るのも――じつは“魔除け”のためなんです。また、子どもがよくする、あの「あっかんべー」も、じつは同じ“魔除け”の所作という説があるのだとか。「あっかんべー」をすることで、目の粘膜と舌の“赤色”が見え、相手に対する“魔除け”になるわけです。面白いですね!

*次回は「春分の過ごしかた」3月17日(木)更新予定です。

構成・文/国実マヤコ
バナーイラスト/Sunny


Written by 櫻井大典
櫻井大典

アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。
SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず新たな漢方ユーザーを増やしている。
主な著書に『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』、『こころの不調に効く! 気楽に、気うつ消し』(ともにワニブックス)、『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)、『漢方的おうち健診』(学研プラス)ほか多数。
Twitter: @PandaKanpo
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HP:https://yurukampo.jp/

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