【ダイエットの落とし穴】金を払って太ってしまった女の末路

【ダイエットの落とし穴】金を払って太ってしまった女の末路



「パーソナルジムが近所に出来まくっている!」という実感のあるアナタに読んでほしい。
「読めば痩せる!?」笑えるダイエットストーリー第9話。


 

《第09話》「金を払って太ってしまった女の末路」

これは世にも奇妙な、身の毛もよだつ、私の友人に起こった話である──……。

私には、学生時代からの付き合いである“モッちゃん”という友人がいる(ちなみにイントネーションは松本人志さんの愛称“まっちゃん”と同じイントネーションだ)。

4年くらい前のことだ。モッちゃんから「結婚する!」とラインが来たのは。私は当然「おおーモッちゃんおめでとうっ!!」と……返さなかった。

なぜなら、その直後に

「私、ダイエットするわ!」

とラインがきたからだ。

学生時代、ヤツの「ダイエットするわ!」という発言を一体何度聞いたことか。
ちなみにモッちゃんが「ダイエットするわ!」と言い出してやり遂げられたところを私は一度たりとも見たことがなかった。

高校の時、一度ヤツが、「今回は本気。マジ本気だから」と言い、「本気だから、あたしジム通うから」と言い出したことがあった。
モッちゃんは親に、ジムのお金を出して欲しいとお願いすると「どうせ続かないからダメ」と一蹴。
ムカついたモッちゃんは、自分でジム代を稼ぐとパン屋でバイトを始めた。
「自分で稼いだ金で痩せてやんよ!」
そう豪語したモッちゃんは、そのバイトが性に合ったらしく、結構長続きした。

その頃はまだ廃棄のパンをもらえるような時代で、昼によく廃棄のパンを持ってきては、「学食の金も浮くしバイト代稼げるし一石二鳥だわ〜!」と笑っていた。
そんなヤツはバイトを始めて二ヶ月で3キロ太った。

もちろんその後ジムに通うこともなかった。モッちゃんは、「なんかね、遊んでたら気がついたらバイト代なくなってんだよね〜」と笑っていた(ちなみに私も恵んでもらった廃棄パンで2キロ太った。モッちゃんコノヤロー!)。

その他にも、
「もうサラダしか食わねー」
と言ったその日の放課後に、
「今日ラーメンしばきにいこーや!」
と言い出したり、
「私、今日から自転車のらないから。走る。もう常に走る」
と言った直後に、
「あ、そうだ。原付の免許取りに行かね?」
と言ったりする、モッちゃんはそういうヤツだ(明るくて楽しい最高の友人ではある)。

 

そんなモッちゃんが結婚するにあたり、ダイエットをするという。
私がモッちゃんに「結婚おめでとう」よりも先に、「出来んの? ダイエット」と返してしまった気持ちもわかっていただきたい。

どうやらモッちゃんは結婚するにあたり“ウェディングフォト”というやつを撮るらしい。
「自分の一番綺麗な姿残したいべ?」
というモッちゃん。
気持ちはわからなくもない、が、しかし!
モッちゃんがダイエットに成功する姿を正直一ミリも想像できない!

私は、友人として写真を見せられた時に「えーめっちゃ綺麗ぇ! 素敵ぃ!」という準備だけはしておこうと思った。たとえ1gも痩せていなくても。いや、むしろ2キロほど太ったとしても。

そう思っていると、モッちゃんから返信がきて「今回は絶対大丈夫〜!」と。何を根拠に言っているんだコイツは。学生時代の悪行の数々を忘れたのか?

モッちゃん「だって、30万払ってパーソナルいくことにしたから!」

大丈夫か、モッちゃん!!!

その後、何回かモッちゃんとラインのやり取りをしてわかったことは

・もうすでに30万は入金済み。
・大金を払ったからには必ず結果を出さなければと焦っている。
・毎日、毎食の食事指導もしてくれるし、ジムでの運動指導もしてくれる。
・トレーナーさんからは「ついてきてくれれば結果を出します! がんばりましょう!」と発破をかけられている。

ということ。
大丈夫なのかモッちゃん。
30万あったら結構なもんが買えるぞ。50インチくらいの大型テレビ買えるぞ。いやあれ10万くらいか。50インチのテレビ3台買えるぞ。3台はいらねーよ。
大丈夫なのかモッちゃん!!

 

そして二ヶ月後──
モッちゃんは……

 

なんと7キロのダイエットに成功した!!

 

私の予想に反して、モッちゃんはダイエットに成功したのだ。
しかも目標としていた二ヶ月で6キロを1キロも超えての成功。

私は驚きを隠せなかった。
あのモッちゃんが。
ダイエットをすると言いながら、焼きそばパンをおかずにおにぎりを頬張っていたあのモッちゃんが。
すげーよモッちゃん。頑張ったんだなモッちゃん。

そうして送られてきたウエディングフォトには、
確かに私が知っている中でも一番綺麗なモッちゃんが、旦那さんと仲睦まじく写っていた。
よかったね。モッちゃん。

 

しかし、
30万円で7キロということは、
1キロを約4万3千円で買った計算か……。
これを高いととるか、安いととるかは、人それぞれ……か……。

そして結婚式を終え、私も友人としてそれなりに感動し、
モッちゃんの幸せな結婚生活がスタートした。

 

結婚して(7キロのダイエットに成功して)四ヶ月が経った頃──
二人で久々にお茶をしているとモッちゃんが、

「私、あれから3キロ太ったんだよね」

…………

私はなんとも言えなかった。

まだ4キロ痩せてるともいえる。
痩せたところから3キロ太ったともいえる。

モッちゃん「パーソナルではさ、リバウンド率は15%くらいって言われてたんだよね」
まあまだ4キロ痩せてるし、リバウンドというほどでも……ない、気がする。

モッちゃん「ねぇ? そもそもどこからがリバウンド? 何がリバウンド? リバウンドってなに? 美味しいの?  リバウンドの定義を教えてよ! ねぇ! 安西先生!」
誰が安西先生だよ。あんなタプタプしてねーわ。

まあ私が言えることは、
1キロを約4万3千円で買った計算は崩れ始めているということだ(4キロ減ということは1キロ7万5千円)。

まぁでも望んでいた“自分の一番綺麗な姿”のウエディングフォトは残せたわけで。
それは、あるいは一生物の幸せかもしれないわけだし。
私がそう言うとモッちゃんは、

「……まーね」

と、唇を尖らせ、満更でもない顔をした(腹たつ顔だった)。

 

その後、モッちゃんは妊娠。無事に第一子を出産。間も無く3歳になる女の子がいる。
私の友人の人生は順風満帆といえる。私も嬉しい限りだ。

まあモッちゃんはあれから、

8キロ太ったが。

致し方ない。
出産もあって、子育てもして。色々あるだろう。頭下がる。仕方ないぜモッちゃんよ。

でも一番問題なのは、
最近モッちゃんは、例のウエディングフォトを見て、

と思うことだろうか。
そんなモッちゃんは間も無く、子供の七五三で家族写真を撮ることになっているらしい。
彼女はそのために再び30万を払ってダイエットをしている。

10キロ痩せるまで、私は変わらずあと8キロ──

 

“知識”を身につけた未来のわたしから一言二言

「ウェディングフォトのために痩せる!」
そういう目的があることはとても素敵なことだと思う。
てかモッちゃん、あんたはすごい。
目的を持って行動して、それで実際痩せたんだからマジですごい。あんた偉いよ!

まあでも人生にはいろんなことがある……。
出産もあれば、仕事が忙しい時、どうしても飲み会が多いシーズン、怪我や病気もあるだろう。

リバウンドしないようにしていても、のっぴきならない事情でまた太ってしまうなんて言うのは、十分にあり得る話です。
でも……流石にその度にお金を払うのはもったいなくないですか?

これはあくまで私の考えだが、私は、どれだけお金持ちであったとしても、何十万も払ってパーソナルで痩せた体を買うべきではないと思っている。
確かに高いお金を払えば「この金を無駄にするわけには行かない!」と頑張れるのも事実だろう。実際に結果が残るのも頷ける話。

では何が問題なのか。
それは、知識がたまらないことにあると私は思う。

パーソナルで行われるのは、短期間でガクンと体重、体脂肪を落とす方法であることが多い(もちろん全てのところがそうではない)。
二ヶ月で何キロと言う結果を残さなければならないパーソナルでは、その結果が出るようなプランが当然作られる。ただそのプランは、ガクンと落とすための、ある程度厳しいものだろう。

苦労して大金も出して、おそらく結果は出る。
でも……もう一度太ってしまったら?
リバウンドしなければいいだけ、と言われるかもしれないが、人生のいろんな事情で、どうしても体重が増えてしまった時はどうすればいいだろうか?

また30万円払うのはさすがに馬鹿げていると思うのは私だけだろうか。なあモッちゃんよ。
60万あったら50インチのテレビ6台買えるぞ。6台はいらねーよ。

人生の“のっぴきならない事情”でまた太ってしまっても、
ダイエットの知識さえあれば、戻す方法を知っていれば、いくらでも対策を打つことはできる。
もちろんパーソナルでやったことを一人でやれるならそれでもいい。
でもかなり厳しいものであることが多いがゆえに、一人でそれをやろうとするのは……ちょっと難しそうじゃないですか?
(と言うよりその根性があるなら、最初から大金を払わなくてもおそらく痩せられる)

ここでは何度も語っていることだが、ダイエットは知識さえあればそこまで難しいことではない。期間を決めずにやれば、楽に結果を残すこともできる。

だからこそ、ダイエットの知識を貯めるために、パーソナルではなく、自分で試行錯誤してやるべきだと私は思う。

自分で色々試してみて、たくさん失敗して、たくさん成功して、「自分用の楽な知識」を身につけていく。
そんな必要があると私は思うのです。

自分で知識を貯めて、自分自身の楽なやり方を知って、ダイエットが終わったあと、「こういう時はこうする」を知っていたら、維持することだって簡単だし(メンテナンスカロリーでいるように心がけるとか)、もし何かの事情で太ってしまっても、元に戻すこともできるはず。

一つハッキリ言えることは、
パーソナルを耐え抜く力があるなら、人の力なんて借りなくても絶対に痩せられる。
それだけは保証します。

とりあえずモッちゃんには、次写真を撮る時には、30万を払う前に必ず私に連絡をくれと伝えている。

 

(第10話につづく……2023年12月11日公開予定)

作者/【体脂肪率3%の脚本家】の保木本真也
『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)『事件』(WOWOW)など
ベストボディジャパン2023松山大会 モデルジャパン部門ミドルクラス グランプリ

イラスト/藍沢みお、津和野諒


Written by 保木本真也

「日本一の脚本家」にはどうひっくり返ってもなれなそうなので、「日本一イイカラダをした脚本家」を目指す、日本で最も間違えた方向をひた走る脚本家。
コンテスト出場時は体脂肪率を3%にまで下げ、仕事のクオリティを下げたり下げなかったりするので、今、「日本一間違えた脚本家」であることは言うまでもない。
※体脂肪率は体成分分析装置InBodyによる測定。
X(旧Twitter) @HOKKII

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