雨宮まみさん+栗原康さん対談「はたらかないで、素敵な暮らし!?」【前編】


昨年11月のこと、神楽坂にある温かい雰囲気の書店「かもめブックス」にて、雨宮まみさん&栗原康さんのトークイベント「はたらかないで、素敵な暮らし⁉」を開催しました。

前編

――面識はあったものの、ちゃんと話をするのは初めてというおふたり。女性の自意識や恋愛、性などをテーマに多くの媒体で執筆、最新刊『自信のない部屋へようこそ』(小社)を上梓された雨宮まみさんと、話題の本『はたらかないで、たらふく食べたい 「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)の著者である政治学者の栗原康さんが、理想の暮らし方、はたらき方について語り合いました。打ち合わせ0分のガチンコトーク、スタートです!

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はたらかないで、たらふく食べたい

雨宮 馴れ初めというか、私たちがお互いを知ったきっかけなんですけど、私は栗原さんが書かれた『はたらかないで、たらふく食べたい』を読んだときに、すごく引き込まれて、読んでいるうちに拳がどんどんつきあがってくるような感覚があって。一度お話ししたいなと思っておりまして、今回お願いさせていただきました。

栗原 ありがとうございます。ぼくが雨宮さんを初めて見たのは雨宮さんのトークイベントで。文章は上手いし話は面白いしキラキラしてるし、「うおー! なんだこの人は!」と。

雨宮 本当ですか(笑)!?

栗原 今日はぼくのことをご存知ない方もいらっしゃると思うので、まず自己紹介をさせていただければと思うのですが……。ええと、栗原と申します。はたらかないでたらふく食べて、生きていきたいと思っております。

普段は大学の非常勤講師などをしながら執筆したりしています。大学の講師というと聞こえはいいようですが、山形県まで出稼ぎに行って週に一コマしか教えていない。文芸学科で短編小説を読ませる授業をやってるんですけど、小説を読んできてもらって、30~40分くらい学生同士の討論の時間をとるんですよ。

雨宮 栗原さんが話す時間、ほとんどないじゃないですか(笑)。

栗原 ないんですよ(笑)。僕はだいたい「イイネ!」と言って授業が終わる。ある意味授業でも、はたらいてないっちゃはたらいてない(笑)。ぼく、一応肩書は政治学者なんですよ。政治学者と言いながら、モットーは“はたらかないで、たらふく食べたい”。

今の世の中って、金を稼がないと生きていけないと言われている。とにかく「働け」ということと、モノを手にするためには買わなきゃいけないと。要するに、はじめから生きる上で尺度というかモノサシができている。端的に言うと“金、金、金”。長渕剛の歌詞なんですけど(笑)。そのモノサシがものすごく強いなと。

あるいはお金とも絡んでくることですが、例えば家の中でも、“女性はこうあるべきだ”“夫はこうあるべきだ”と、モノサシがはっきり決まってしまっている。そういうモノサシが、社会の中でひとつふたつと作り上げられてしまって、その中で生きなきゃいけない。それをちゃんとしないと「ろくでなし!」「社会人失格!」みたいに言われてしまうことが多いのが、ぼくはすごく息苦しい。この息苦しさを、雨宮さんと共有しているのかなと感じています。

雨宮 はい、はい。

栗原 ぼくは、開き直ってもいいのかなと。一度、はたらかないところから始めてみる。金がなくても生きていけるんじゃないか。「いざとなったらなんとでもなるんだから、なんでもやれる」が、最近の自分の中の決め言葉です。決まっているかはわからないんですけども……。

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雨宮 栗原さんのお考えとしては、ベースとしては人目をもう、気にしない。こうしなければダメな人間と見られてしまう、社会の一員として認めてもらえない。じゃあそれでいいですよ。という開き直りの姿勢が根本ですよね。

栗原 そういうふうに割り切ってみると、文章を書くにしても「お金にするにはこうしなきゃいけない、ああしなきゃいけない」と思うのをやめて、政治的なことでもガチンコで変なことを書いてみようかなと思えたりします。『はたらかないで、たらふく食べたい』という本は、大学で政治学者としてやっていくには書いちゃいけない内容なんです。

世の中、あれをやっちゃいけない、これをやっちゃいけないっていうけど、そうじゃなくて、あれもやれる、これもやれる、もっとやれる。尺度が決まっているところからどんどん自分を解放していくというか……力の高鳴りを感じることができるのかなと思っています。“はたらかないでたらふく食べたい”というのは、文字通り“はたらかない”ということでもあるし、同時に自由にもっともっと好きなことをやっていいということを実感として持っておくというか。「できるんだ!」と自分が成長していくことが大事なのかなと。

雨宮 はい、はい。


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