『自信のない部屋へようこそ』

『自信のない部屋へようこそ』


ものを書く仕事をはじめて以来、休日だからといって「わーい! きょうは休みだぞー!」みたいに開放的な気分になったことは、おそらく一度もありません。
「せっかくだから」とどこかへ出かけたとしても、帰ってきたらまた仕事しちゃうし。というか、そもそも出かけた先でもたいてい仕事のことを考えているので、基本的に救いようなしでございます。

そんな感じだから、連休は3日が限度。
それ以上休みが続くと、まるで社会から置き去りにされてしまったような気持ちになってしまうのです。
いわゆる「ワーカホリック」というやつなのかもしれません。いや、かっこつけてるけど、それ以前に単なる小心者だな。

問題は、そんな状況だから、書斎がすぐに乱雑になってしまうということ。妻とルンバが働いてくれるので、そこそこ清潔な状態が保たれているとはいえ、それでもすぐに本の山はできてしまうわけです。
妻とルンバには「本には触るな」と命令しているので、山ができないはずがないのです。

ましてや一度は大量処分したはずの(アナログ)レコードも、数年前からまた買いなおしているという矛盾。
妻とルンバには「レコードにも触るな」と命令しているので、床がレコードで侵食されないはずがありません。

ただ、過去に一度でも大量処分をしてよかったなと思うのは、もはや乱雑な状態を耐えられない体質になったということ。

以前だったらそのままにしていたかもしれないけれど、“片づけたいのに片づけられない”状態が続くと、「あーッ、もうっ! 片づけたい!」という思いで頭がいっぱいになるわけです。

だから、「次の日曜日には片づけよう」と何度思ってきたことか……。つまり僕という人間は、自分で思っていたほどだらしがないわけではなかったのだな、よかった(よくねーよ!)。

ということで、増え続ける本とレコードをそのまま放置しておくと仕事に差し支える気がしたので、先週の金曜日、まずは本を整理してみました。といっても細かくチェックしていくと半日ぐらいはすぐに過ぎてしまうに決まっているので、とりあえず本棚に押し込んだだけですが。

で、翌日の土曜日には、注文しておいたレコードケースがディスクユニオンから到着。そこで午後は、本よりも乱雑になっていたレコードの仕分けに時間を費やしました。どう考えても日常的に効きそうにないものをケースに詰め、別の場所に移動したわけです。

すると、たったそれだけのことで気持ちがだいぶ楽になり、結果的には予想以上に爽快。おかげで、充実した午後を過ごすことができたのでした。ずっと気になっていたことを、クリアできたからですね。

でね、それから数日を経た今日、『自信のない部屋へようこそ』(雨宮まみ著・ワニブックス刊)という本を読んだのです。この方は女性の自意識などをテーマに執筆されているライターで、本書はモチイエ女子webというサイトで連載中の「理想の部屋まで何マイル?」というコラムに加筆して書籍化されたものらしい。

印南さん連載用
自信のない部屋へようこそ

タイトルにあるとおり、「部屋」をテーマにしたエッセイ。「へー、文章のうまい人だなー」と感じつつ、共感できる部分でニヤッとしたりしながら(キモいね)読み進めていたところ、巻末のコラムに「神フレーズ」を発見。

 『最高の休日にはできなかったとしても、出だしからダメな休日をそこそこいい休日に変える方法もある。
それは「やらなきゃな」と思い続けていること、ずっと気になっていることを、つまらないことでもいいのでひとつかふたつ、片付けてしまうことだ。』
(186ページより)

数日前のあの午後、スッキリした部屋を眺めながら僕が感じたことが、まさにこれ。

ディズニーランドに行くとか、映画を観に行くとか、公園でひなたぼっこをするとか、そういう一般的な休日の過ごし方にくらべれば貧弱かもしれないけれど、「やらなきゃな」と思い続けていたことをやったからこそ、僕は解放されたわけで。

「素敵な休日」であるかどうかの基準は人それぞれ。結局、「そうすることによってじぶんがどうなったか」が、なにより大切なのではないでしょうか?
本書とプチ掃除は、僕にそんな気づきを与えてくれたのでした。

 

 『自信のない部屋へようこそ』

Written by innami atsushi
innami atsushi

印南 敦史(いんなみ・あつし)/作家・書評家・ライター 1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は、「ライフハッカー[日本版]」「マイナビニュース」 「ニューズウィーク日本版」「Suzie」など多くのメディアで連載。最新刊『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社刊)がベストセラー記録更新中。FMおだわら78.7Mhzで 毎週日曜日20:30~21:00(再放送:金曜22:30~23:00)、ラジオ番組「印南敦史のキキミミ図書館」のパーソナリティも。http://book-radio.net

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