『ゲストハウスガイド100 -Japan Hostel &Guesthouse Guide-』

『ゲストハウスガイド100 -Japan Hostel &Guesthouse Guide-』


私事で恐縮ながら、息子の内定が決まり、無事に就活が終わりました。彼はただでさえ就職に不利な美大生であり、そのなかでも特に就職が大変そうな日本画専攻だったのですが、なんとかなったのでホッとしています。

とはいえ本人は、卒業制作だとかアルバイトだとかで忙しそうではあります。しかも基本的にお金がないようなので、ちっとも余裕があるようには見えません。しかしまぁ、若いうちはそのくらいのほうがいいんですよね。

あまり強制するようなものではないけれど、できれば彼には、なるべく若いうちにいろんなところへ行ってみてほしいと思っています。たとえば、どこかの国を放浪するとかね。海外の場合、いまはテロなどの心配もあるでしょう。しかし動いたほうがいい場合もあるし、なんなら国内であったとしても、十分に大きな経験はできるわけです。

そういえばあいつは数年前、途中で喧嘩したりしながらも、高校時代の親友と京都を旅してきたことがあったな。帰ってきたときには、少し大人っぽくなっていたようにも見えたな(考えすぎかもしれない。いや、考えすぎだろう)。ともあれ、そういうことをしておいて損はないと思うのです。

もちろん「年齢は関係ないんだから、何歳になっても旅はできる」という考え方だってあるでしょう。実際、僕もしてみたいし。でも、 20代だから見える風景、受け止められる感性などは確実にあるわけなので、その時期を逃すのはもったいないということ。自分の息子だけにではなく、すべての20代にそういいたいですね。

で、まったくの偶然なのですが、そんなことをボーッと考えているとき、印象的な本に出会いました。

『ゲストハウスガイド100 – Japan Hostel & Guesthouse Guide -』(前田有佳利:著/小社刊)がそれ。

印南さん連載用text

0801BOOKOUT

著者は、ゲストハウス好きが高じて、2011年の元旦からブログでゲストハウスを紹介しはじめ、やがて「FootPrints」というゲストハウス紹介サイトを立ち上げたという人物。これまでに国内120軒以上を巡ってきたといいますからかなりのものですが、そんな経験をもとに、本書では実際に訪れたことがある100軒を厳選して紹介しているわけです。

ちなみにゲストハウスとは、著者の言葉を借りるなら“非日常がまるで日常になる、シェアする旅の宿”。世界や日本各地から、バックパックを背負ってさまざまな旅行者が集まり、寝食をともにする場所です。

その特徴は、交流スペースがあり、一泊素泊まり一人から宿泊が可能で、ドミトリー(相部屋)が存在し、トイレ、シャワーなど水回りが共有だということ。つまり、古くからある「ユースホステル」に近いといえば近いのですが、本書をぱらぱらとめくっていると、ユースホステルにはない特徴があることがわかります。

各施設が趣向を凝らし、洗練された現代的な空間づくりを実践しているのです。
見た目もおしゃれなので、「ここ、泊まってみたいなあ!」と思わせるような施設も多数。
しかも本書はそれらを“アート建築”“日本情緒あふれる古民家”“地域の発信拠点となる宿”“個性的なコンセプトのある宿”などの特徴ごとに分けて紹介してくれているので、見ているだけで楽しくなってくるのです。

ところで著者によれば、ゲストハウスには“町の拠点”“地域の入り口”“まちコンシェルジュ”など、さまざまな代名詞があるそうです。その理由は「“完結しない宿”」だから。ということで、その考え方には強い説得力があると感じました。

子連れでも安心できる浴槽つき宿などもあるけれど、とはいっても旅館やホテルのような「コース料理つき・大浴場つき・お忍びデートもできるプライベート空間」とは対極的な存在だということ。なお、そのことに関連したフレーズがとても印象的だったので、今回はそれを「神フレーズ」としてご紹介したいと思います。

むしろ、足らない部分があるからこそ町と繋がれる、町の日常に溢れる魅力と一緒に、思う存分味わって! そんな想いから、町一体を宿と見立てて伝える工夫がなされています。
(60ページより)

宿を拠点として町の魅力を体感することによって、その町全体を好きになることができる。だから、やがてまたその宿と町に帰ってくる。そんなゲストハウスと地域の関係性を著者は、「まるで自然生態系」だと表現していますが、たしかにそこには、ホテルや旅館では味わうことのできない“人間的ななにか”がありそうです。

ところで先にも触れたとおり、ゲストハウスに訪れる人は20代半ばから30代半ばがいちばん多いそうです。しかしその一方、40~50代の個室宿泊者や、60~70代の地元訪問者も少なくないのだとか。年齢を重ねた人たちが若者とゲストハウスで交流できるのであれば、そこにはまた価値がありそう。そういう意味では、こちらの予想を超えたいろんな使い方があるのかもしれません。

見る限り「どうしても気になる」宿が何軒かあったので、いつか行ってみようかな。

 

『ゲストハウスガイド100 – Japan Hostel & Guesthouse Guide -』

 

『遅読家のための読書術』
大好評発売中!

Written by innami atsushi
innami atsushi

印南 敦史(いんなみ・あつし)/作家・書評家・ライター 1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は、「ライフハッカー[日本版]」「マイナビニュース」 「ニューズウィーク日本版」「Suzie」など多くのメディアで連載。最新刊『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社刊)がベストセラー記録更新中。FMおだわら78.7Mhzで 毎週日曜日20:30~21:00(再放送:金曜22:30~23:00)、ラジオ番組「印南敦史のキキミミ図書館」のパーソナリティも。http://book-radio.net

»この連載の記事を見る