『猫ブッダは悩まニャイ』

『猫ブッダは悩まニャイ』


ペットを飼いたいという娘のリクエストに応え、少し前からセキセイインコを飼いはじめました。メスで、いまはまだ幼稚園生ぐらいの年齢。 まぁ僕がなにかを決めたわけではなく、いつの間にか、静岡生まれのそいつは我が家で暮らしはじめることになっていたわけですが。

だから最初は消極的だったし、「どちらかといえば文鳥の方がよかったなぁ」とか思っていたのだけど、しかしまぁ、なついてくれるとかわいいものですね。
僕は書斎のドアを開けておくことが多いのですが、リビングから廊下の角を曲がって書斎まで飛んでくるわけですよ。それで、肩にとまったりするわけですよ。それって、完全に目的は僕じゃないですか。かわいくないわけがない。 仕事の邪魔をするのはやめてほしいんだけどね。

ちなみに娘とは「次は犬だね」と話し合っていて、そのために「500円玉貯金」をしています。しばらくしたら、犬とセキセイインコが同居する家になるかもしれない。 好きなんですよ、犬。

逆にいえば、猫がちょっとね……苦手とまではいかないにしても、あまり惹かれるものがないんです。
おそらく、あの自由気ままな感じがいけすかないのだろうと思います。
媚を売れとはいわないが、「せめて立派な社会人として、基本的な礼儀くらいは守れよな」的な(猫になにを求めるのか? そもそも人じゃないし)。

だから正直、最初はこの本にも特に惹かれませんでした。

なにって、『猫ブッダは悩まニャイ – しあわせに生きる84の方法』(宮下真:著/ワニブックス刊)のこと。

印南さん連載用text
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仏教の原始経典である『ダンマパダ』を、猫が“猫目線”での解釈で解説していくという、少なくとも犬好きにはあまり響かないコンセプトであるわけです。

だから、しばらくはデスクに置いたままだったんだけど、きのうの深夜、気分転換のためにぱらぱらめくってみたら、意外なくらいにスルッと無理なく、心のなかに入ってきたんです。
そう、飼い猫が無言&無表情で近づいてくる感じ。  

仏教の経典だとかいわれると、それだけで手に取りにくかったりするじゃないですか。

でも、「でも読むと、そのことばはじつにシンプルで、猫にでもわかった。文章はみんな短くて、ツイッターのつぶやきのようでもある」 と本人、いや本猫がいうとおり、たしかにわかりやすいのです。無責任にページをめくっているだけで、“響くことば”が向こうから近づいてくる感じ。  

だから、せっかくなので今回はこの本を取り上げてみようと思いました。
きのうの夕方までは別の本にしようかと考えていたんだけど、こっちを優先することにした。  

そして、数あるなかから今回僕の心に(さりげなく)訴えかけてきた「神フレーズ」は、「第一章 猫ブッダ こころが楽になるワザを知る」のなかのこれでした。

われらは何物も所有せず、安楽に生きていこう。
われらは光り輝く神々のように、喜びを滋養として生きよう。
(32ページ「ダンマパダ200 by ブッダ」より)  

「光か難く神々のように」とかいわれちゃうと、なんだかちょっと後ずさりしちゃう感じもなくはないですよね。

でも、そこはそれ、仏教思想ですから。しかしそれはともかく、基本的な主張にはすごく共感できると思いませんか?  著者(猫)によれば、「物やお金を欲しがり、手に入れては喜ぶ暮らしは、幸せなように見えても、じつは苦しみばかりを生む」ということをブッダはわかっていたのだそうです。 

たしかにそのとおりかもしれないし、なにが新鮮って、断捨離やミニマリストの考え方がまさにこれじゃないですか。
そういう意味では時代を先取りしていた……という表現はちょっと違うかもしれないけど、いまという時代の空気感にとても合っている気がしたのです。  

だからそんなこともあり、“いま”の視点で読んでみると、なかなか心地よいのです。

「心配ニャイ!」とか、やたらと「ニャ」がつく文章にも最初は「なんだかなー」という印象を抱いたのですが、読んでみるとまったく気にならないどころか抵抗なく受け入れられたりする不思議。  

というわけで、犬好きの僕でも楽しめた、そして勉強になった一冊なのでした。おすすめです。

 

『猫ブッダは悩まニャイ ―しあわせに生きる84の方法』

Written by innami atsushi
innami atsushi

印南 敦史(いんなみ・あつし)/作家・書評家・ライター 1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は、「ライフハッカー[日本版]」「マイナビニュース」 「ニューズウィーク日本版」「Suzie」など多くのメディアで連載。最新刊『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社刊)がベストセラー記録更新中。FMおだわら78.7Mhzで 毎週日曜日20:30~21:00(再放送:金曜22:30~23:00)、ラジオ番組「印南敦史のキキミミ図書館」のパーソナリティも。http://book-radio.net

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