【後編】柳下恭平さん、出版の未来は明るいって本当ですか?

【後編】柳下恭平さん、出版の未来は明るいって本当ですか?


 

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BOOKOUTジャーナルとは
 
知られざる想いを知る―。
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柳下さんの言葉どおり、かもめブックスの書棚には、一つのテーマに沿ってさまざまな角度からの視点を持った書籍を並ぶ。例えば、今流行の“猫特集”にしても、写真集や特集雑誌だけではなく、文学や絵本、実用書とそのチョイスは幅広く、独特のセンスだ。小さなスペースの本棚を眺めているだけで、世界の広さまでもが伝わってくるような…。

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images 書店を始める前、自分が会社を引退したら何をしよう? って考えていて。いくつか考えた中の選択肢のひとつに一人で本屋さんをやろうというアイデアがあったんです。その時に考えた企画が“本棚屋さん”というもの。

友達の家に遊びに行くと、編集者やデザイナーの家には本棚があるんだけど、それ以外の業種の人の家にはそもそも本棚がないんですよ。本が売れてないって言われるけど、そもそも本を置く場所が家にないんですね。それで、本を置くスペースを生活レベルでデザインしたほうがいいんじゃないかなと。

お風呂の入口にマガジンラックがあってもいいし、台所にレシピが2冊とキャンドルやクックパッドを見るためのiPadを立てるスタンドがあってもいい。ワイン箱が1個あって、そこに本が3冊とかぼちゃかサボテン、リサ・ラーソンの置物があれば、もう立派な本のスペースですよね。そういう空間を作る本棚屋さんを郊外でやるのも面白いなと。

本がある生活そのものをデザインしてしまおうという発想が面白い。
それは、本が売れないと言われる現状に対する危機感を感じての考えだった?

imagesそうではないですね。とにかく僕は会議が嫌いで。チームで動くのは好きなんですけど、そのためには会議が必要。引退したら会議のない世界に行きたかったんです。

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今までにない発想の“本棚屋さん”の企画を温めていた柳下さんが、かもめブックスというリアルショップを開くとなった時、やはり今までにないスタイルに帰着したのも当然かもしれない。

images 考え方としてはシンプルなんですよ。もともとラーメン屋だった場所に居抜きでラーメン屋をやるって時、全く同じ業態だったら、もし僕が企画書を見る側の人間なら『大丈夫なの?』って思いますから。

出版の未来は明るいって話に無理矢理繋げるわけではないですが、この場所にあった本屋さんは決して赤字だったわけではないんです。ただ、本屋さんって辞めやすいんですよね。委託商品なので返本しちゃえば退職金代わりになりますし、什器もそれほどないから現状復帰にもお金がかからない。

さらに今、町の本屋さんは60~70代のオーナーが多いと思うんですが、後継者問題もある。だから、本屋さんが減っているという現状は、売れてないだけが理由なのかな? って素朴に思うんです。減っているのは事実だけれども、後継者さえいれば続けている本屋さんもあるんじゃないかな。


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