圧力鍋体験記

圧力鍋体験記


少し前になるが、ハワイで遅い夏休みを過ごした。滞在中、ハワイに住む友人が自宅で手料理を作ってもてなしてくれた。メニューは塩漬けにした大きな牛肉の塊を煮込んだコーンビーフ。圧力鍋で小一時間ほど煮込んだだけで、ほろほろと崩れるほどやわらかくなったコーンビーフはただ水で煮込んだだけとは思えないほど滋味あふれる味わいで病みつきになる美味しさ。

日本に帰ってこれを作ってみたいという欲望がムクムクと沸き上がるのを止めることができなくなった。アメリカならどこのスーパーでも手に入るという牛塊肉の塩漬けは日本では見たことはないが、ネットで調べてみると自分でも作れることがわかった。あとは圧力鍋で煮るだけなのだが、肝心の圧力鍋が我が家にはない。

まだ小さかった頃、実家には確かに圧力鍋があった。お正月用の黒豆を煮たり、角煮を作ったりしていたのだが、台所で母が圧力鍋を火にかけるたびにふたの上に付いたつまみがカタカタと振動したかと思うとシューシューとものすごい勢いで蒸気が噴き出すさまが子ども心になんとも恐ろしく、そばに近寄ることもできず離れた場所からこわごわ眺めていたのを思い出す。

煮上がった鍋のふたを開ける際も、もう蒸気が抜けたかどうか心配しながら、ガチャッと留め金をはずす作業が複雑でとても私にはできないとすっかり圧力鍋恐怖症になった。結婚してから30年になるが一度も圧力鍋を買うという選択肢はなかった私だが、ハワイでいとも簡単に操作するのを見て、「圧力鍋、欲しい!」とあっという間に宗旨替えしてしまった。

そして改めて今の状況を調べてみると昔のものとは比べ物にならないくらいデザインも使い勝手も格段に進化していることがわかった。ネットで見比べながらどれにしようかと吟味を重ねて選んだのがマイヤー社のもの。ふたがワンタッチで開閉できて操作がとても簡単だということ、パッキンや蒸気の吹き出しつまみなどの付属品がすぐに取り外せて洗うのも楽だということ、ふたを取ったあとの鍋自体も煮込み鍋としても使えること。シンプルで機能的なデザインも好みだ。

手元に届いた圧力鍋を使って、さっそくコーンビーフに挑戦してみた。ジップロックで塩漬けにしてから1週間ほど冷蔵庫で寝かせていた塊肉を一度水で洗ってからいよいよ本番。説明書の通り、ふたをしてボタンを押すだけでしっかりと固定される。沸騰してからシューシューと蒸気は吹き出すが昔のように怖くない。40分ほど煮てふたを恐る恐るあけてみると果たしてそこにはやわらかく煮上がったコーンビーフが出来上がっていた。余りの簡単さに拍子抜けしてしまった。

そうなると現金なものでなんでも煮てみたくなる。いつも作っている「ふーみん風の豚バラの梅干し煮」、「にんじんのスープ」も短時間でできてしまう。
じゃがいもを皮のまま少しの水と3分ほど加熱するだけでホコホコに熱が通り、皮もつるりとむけるからポテトサラダも簡単。小一時間かけて蒸したり、煮たりしていたのが信じられないほどだ。調子に乗って作った、牛テールを煮込んだハワイ風のオックステールスープも骨からほろりと肉がはがれ、クリアに澄んだスープもちゃんと出来ていた。

圧力鍋を使うと文字通り、時短になる。我が家には電子レンジがないので、電子レンジのようなイメージなのかなと思った。かたい素材をやわらかくするという作業があっという間だ。

初心者ながら感じたことは、始めから最後まで圧力鍋で作るのではなく、やわらかくするということを主に任せるといいということだ。少し手間でも、肉類は一度下茹でしたほうがすっきり仕上がるし、やわらかくなったあとはふたを取って少し煮込んで味を染み込ませると味に深みが出るような気がする。シチューや煮込みなどはやわらかくなる時間が違うのでかたい肉と根菜類は一緒に煮始めないほうがいいかもしれない。圧力鍋を素材をやわらかくするための道具と位置付けすると気軽に使いやすくレシピも広がると思う。

冬に向かって寒さが厳しくなるこれからの季節、身体の芯から温まる煮込み料理がうれしいもの。シチューやポトフなど圧力鍋の出番がどんどん増えそうだ。最後に自己流のコーンビーフのレシピをご紹介する。

コーンビーフ

<材料>
牛ブリスケット もしくは 肩ロース塊肉 1㎏
水 5カップ
粗塩 大さじ1+1/2カップ(90g)

A
黒胡椒(粒) 小さじ1
オールドスパイス(粒) 小さじ1
ローリエ 3枚

玉ねぎ 1/2個
にんじん 小1本
セロリの葉 1本分

<作り方>
1
牛肉の塊は全体に味が染みやすいようにフォークで数か所刺してから粗塩大さじ1をまんべんなくまぶしつけて1時間ほど冷蔵庫で休ませる。
2
鍋に分量の水と粗塩1/2カップ(90g)とAを入れて火にかけ、煮立ったら火を止めて冷ましておく。
3
玉ねぎ、にんじんは薄切りに、セロリの葉はざく切りにする。
4
1の牛肉から出た水気をペーパータオルなどで拭いてから、ジップロックなどのしっかりしたポリ袋に入れ、3の野菜類を覆うように入れる。2の塩水を注いで空気を抜きながら閉じて冷蔵庫で5~7日(夏場は4~5日)塩漬けにして熟成させる。

5
熟成した牛肉を取り出し、塩水と野菜をのぞいて、流水できれいに洗う。4ℓの圧力鍋に牛肉を入れ、マックスの水量を注いでふたをして沸騰させてから45分中火で煮る。圧力鍋がない場合は大きめの鍋で水3ℓと牛肉を沸騰させてから、ふたをして弱火で2時間ほどやわらかくなるまで煮る。
6
火を止めて粗熱が取れたら鍋から出し、食べやすくスライスする。器に盛りつけ、マスタード(分量外)を添える。余った肉は粗くほぐして、保存容器に入れ、煮汁をひたひたまで注いで冷蔵庫で保存する。

 

 

*次回は12月9日(月)更新予定です。

 

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Written by ariko
ariko

CLASSY.、VERY、HERSなどの表紙やファッションページを担当する編集ライター。日々の食卓をポストしているInstagramが、センスあふれる美味しそうな写真と食いしん坊の心を掴む料理で話題に。現在、フォロワー数は98000人を突破。Instagram@ariko418

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