9/7日頃のテーマ:「白露」の過ごしかた

9/7日頃のテーマ:「白露」の過ごしかた


人気の漢方専門家・櫻井大典先生に、季節「二十四節気」に合わせた中医学について学ぶ、心と身体のための「かんぽう歳時記」。

中医学は「季節の養生」と言われるほど“こよみ”を大切にしています。
そこで、この二十四節気ごとに、おすすめの食材(パワーフード)や養生法などを、たっぷりとご紹介!

数千年という歴史に裏づけられた、中医学の“知恵”を学びながら、日本の美しい四季おりおりを、もっと元気に、もっとたのしく、過ごしてみませんか――?

第6回は、「白露(9/7頃)」です。

 

「白露(はくろ)」って、どんな季節なの?

日中の暑さが少しずつ和らぎ、涼しい風が吹いて、草の穂先などに“白い露”が結ばれる頃――この時期を「白露」と呼びます。ススキが穂を出し、萩やナデシコ、桔梗などの“秋の七草”が美しく咲く姿に、秋の深まりを感じる人も多いことでしょう。
中医学的には “収穫”のタイミングなので、アクティブに活動するのではなく、徐々にスローダウンしていきたいところ。春夏に頑張ったことを、静かに振り返るのに適した時期です。

(イメージ:写真AC)

 

「白露」のパワーフードは?

「白露」の頃におすすめの食材(パワーフード)は、ズバリ、
梨には潤いを生むのみならず、渇きを癒し、余分な熱をとりつつ咳を鎮める力があるので、この時期からさらに秋が深まる頃まで、長く食べたい食材のひとつです。
おすすめは、同じく身体に潤いを与える氷砂糖と一緒に蒸していただく「梨の薬膳デザート」。喉の乾燥や不調を感じたら、ぜひ、食べてもらいたい一品です。

(イメージ:写真AC)

【梨の薬膳デザート】
〈材料〉
梨…1個
氷砂糖…約3個

〈作り方〉
1.梨のヘタを蓋になるように切る。
2.芯をスプーンでくりぬき、氷砂糖を入れる。
3.( 1 ) の蓋をして、汁があふれないように深めの皿に入れて蒸し器で40~50分蒸す。柔らかくなり皮にヒビが入ってきたら完成。

そして、秋口の潤い対策に必須の“生薬”ともなる、白キクラゲ。梨と一緒に煮て、ハチミツをかけて食べるのもいいですね。
また、小松菜もそろそろ取り入れたいところ。一年中見かける平性の小松菜ですが、じつは秋から冬にかけてが、旬。潤いを補うのはもちろん、ストレスのダメージを和らげ、消化吸収を促して身体の潤いも補ってくれる、たのもしい食材です。おひたしなどにして、たっぷり摂ってみてください。美肌にも効果がありますよ。

(※)「五行論」に基づく、食べ物が持つ5つの性質「寒、涼、温、熱、平」を、「五性(五気)」といいます。その食べ物を食べたときに、体内で身体を温めるか、冷ますか、あるいは寒熱のかたよりが起こらないかによって分類され、いずれにも属さず、かたよりのないものが「平性」となります。

 

「白露」の頃の、心と身体の状態は?

寒暖差が激しくなることから、呼吸器系にトラブルが出やすい時期。花粉によるアレルギー症状が出始める人も多いでしょう。
秋が深まり、肺に負担がかかりやすくなっているこの頃は、乾燥に弱い肺を含めた呼吸器系(肺、鼻、喉、皮膚)と、中医学で肺とつながりがあるとされる大腸の疾患に注意が必要となります。
ちなみに、この時期に冷たいものを摂りすぎたり、寒暖差による寒さにやられたり、乾燥によって肺を痛めると、冬に下痢をしやすくなったり、体力の消耗から風邪をひきやすくなるとされています。

また、肺は“悲しみ”の感情とつながる臓器。メンタル面では「立秋」「処暑」に続き、気分の落ち込みや不安など、ネガティブな感情がさらに強くなる頃かもしれません。
そんなときは、「あれもできていない、これもできていない!」と思い嘆くのではなく、これまでに頑張ったことや楽しかったことを“収穫”するような気持ちで、楽しく振り返ってみてください。ぜひ、ポジティブ思考を意識して、おおらかに過ごしましょう。

(※)「五行論」に基づく、「肝、心、脾、肺、腎」の5つを「五臓」といいます。いわゆる「五臓六腑」の五臓にあたり、肝は春、心は夏、脾は長夏(梅雨)、肺は秋、腎は冬に活発に動くとされています。

 

「白露」の過ごしかた(養生)は?

中医学では「滋陰(じいん)・清熱(せいねつ)・補肺(ほはい)」といって、食べ物や加湿で身体の潤いを補給しつつ、熱を取り、肺を丈夫にすることが養生のポイント。そこで、この時期にもっとも気をつけたいのが、空気の乾燥です。
肺が乾燥すると、咳、疲れがとれない、やる気が出ないなど、さまざまな不調につながってしまいます。したがって、この時期の過ごしかたのコツは、一にも二にも“加湿”だと覚えておきましょう。

とくに、肺はあらゆる臓器の中で、唯一、外気と接する場所……。ゆえに、乾燥や冷えは、肺にとって一番の大敵となります。そんな、外気の影響をダイレクトに受ける肺を守るためには、単に加湿器などを使用するだけでなく、サウナやホットヨガでの過度な発汗にも気をつけるようにしてください。
何気ないことに思う方もいるかもしれませんが、加湿こそ、秋の養生の基本。肺を潤して免疫力を高め、体調を崩しがちな季節の変わり目も、元気に乗り切りたいものですね。

ちなみに、粘膜が敏感な人には、味噌や醤油など、腸内環境を整えてくれる発酵食品がおすすめ。大腸は経絡を通して肺と繋がっていると考えられ、肺は肌を司るため、大腸が整うことは、肺と肌を整えることになります。なかでもヨーグルトやキムチなどではなく、漬物屋さんで丁寧につくられた漬物のように、日本古来の発酵食品をぜひ取り入れていただきたいと思います。

(※)中医学の考え方で、全身に張り巡らされた気(エネルギー)を運ぶ道のこと。

(イメージ:写真AC)

 

「白露」の中医学的・たのしみごと

この時期は、中医学の古典で「西に沈む夕日を静かに見て、人生を振り返るのに適した頃」とされています。
そこで、ビルの屋上や海岸など、なるべく見晴らしのよい場所で、実際に美しい夕焼けを眺めながら、楽しかったこと、よかったと思えることなどを、親しい人と振り返ってみてはいかがでしょう? もちろん、一人で静かにノートを広げるのもおすすめです。

思っていることを言葉にして喋ったり、あらためて書き記すことで、頭の中はクリアに整理されます。そのため、思いがけず、明るい展望が開けるといったことも……!

ポイントは「ああしておけばよかった」「これをやっておけばよかった」などと、決してマイナス面を振り返らないこと。ぜひ、思わず笑顔になるような、ポジティブな出来事にフォーカスするようにしてくださいね。

 

暦が秋に入ってからというもの、まるで呪文のように「潤い」「加湿」とくり返していますが(笑)、これは単に秋の養生というだけでなく、さらに空気が乾燥する「冬」を健やかに過ごすための、大事な“準備”でもあるんです!
こうした「備える生き方」「不調の予防」こそが、中医学の真髄といっても過言ではありません――。

*次回は9月21日(火)更新予定です。

構成・文/国実マヤコ
バナーイラスト/Sunny

Written by sakurai_daisuke
櫻井大典

アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。
SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず新たな漢方ユーザーを増やしている。
主な著書に『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』(当社)、『ミドリ薬品漢方堂のまいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』『ミドリ薬品漢方堂のまいにち漢方食材帖』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)。監修に『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』ほか多数。
Twitter: @PandaKanpo
HP:https://yurukampo.jp/

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