健康意識が高まる漢方コラム:秋分(9/23頃)の過ごしかた【櫻井大典】

健康意識が高まる漢方コラム:秋分(9/23頃)の過ごしかた【櫻井大典】


人気の漢方専門家・櫻井大典先生に、季節「二十四節気」に合わせた中医学について学ぶ、心と身体のための「かんぽう歳時記」。

中医学は「季節の養生」と言われるほど“こよみ”を大切にしています。
そこで、この二十四節気ごとに、おすすめの食材(パワーフード)や養生法などを、たっぷりとご紹介!

数千年という歴史に裏づけられた、中医学の“知恵”を学びながら、日本の美しい四季おりおりを、もっと元気に、もっとたのしく、過ごしてみませんか――?

第7回は、「秋分(9/23頃)」です。

 

「秋分」って、どんな季節なの?

「暑さ寒さも彼岸まで」――。
暦の上ではすでに秋がスタートしているものの、秋の彼岸にあたる「秋分」を過ぎるあたりから、季節はグッと変化。一気に涼しくなり、まさしく“秋の到来”を感じる頃となるでしょう。
いわば、秋の前半戦が終わり、ここから後半戦が始まるといったところ。そのため、この時期を目安に、乾燥と冷えにはさらなる注意が必要となります。夏の不調が出やすい時期でもあるので、しっかりと体調管理に努めましょう。

 

「秋分」のパワーフードは?

「秋分」の頃におすすめの食材(パワーフード)は、ズバリ、「ぶどう」!
平性※1のぶどうは肝と腎※2を元気にし、自律神経を整え、体力を補うという、すぐれた効能を持つフルーツです。さらに、足腰の痛み、むくみ、乾燥、神経衰弱にもよく、まさに心と身体のどちらもカバーしてくれる、豊かな秋の実りと言えるでしょう。胎児を安定させる作用もあるので、妊婦さんにもおすすめですよ。

また、このシーズンは引き続き、肺を潤してくれる“白い食材”にも注目。乾燥を潤すのみならず、胃腸も整えてくれる「豆腐」は、ぜひ、温かくして食べましょう。
そして、肺を潤して咳を止める「百合根」も、この時期、取り入れてほしい食材。どう調理していいかわからないという人は、ホイル焼きが簡単です。洗って1枚ずつほぐし、アルミホイルに包んでトースターで焼けば完成! 乾燥の季節に、ぜひお試しくださいね。

(イメージ:写真AC)

(※1)「五行論」に基づく、食べ物が持つ5つの性質「寒、涼、温、熱、平」を、「五性(五気)」といいます。その食べ物を食べたときに、体内で身体を温めるか、冷ますか、あるいは寒熱のかたよりが起こらないかによって分類され、いずれにも属さず、かたよりのないものが「平性」となります。

(※2)「五行論」に基づく、「肝、心、脾、肺、腎」の5つを「五臓」といいます。いわゆる「五臓六腑」の五臓にあたり、肝は春、心は夏、脾は長夏(梅雨)、肺は秋、腎は冬に活発に動くとされています。

 

「秋分」の頃の、心と身体の状態は?

秋分を境に日照時間も変わり、これまでの「陽」の気が、「陰」の気に転じる頃とされています。
気温や湿度の面でも大きな変化があるため、寒くなれば毛穴を閉じる、血流の流れを変えるなど、自律神経系の調節が必要になってくる時期です。じつは、これらの調節がスムーズに行われるかどうかは、夏の養生次第……。冷たく甘いものをたくさん摂っていた、食欲が落ちていたという人は、秋に必要なエネルギーが蓄えられていないため、肌の乾燥、咳、睡眠障害などといった不調が出やすい傾向にあります。

そして、秋はシーズンを通じて気分がふさぎがち。これは、気温の低下とともに乾燥がすすみ、“悲しみ”の感情とつながる臓器である肺がダメージを受けるため。
肺がダメージを受けると、気の動きが悪くなり、気分が落ち込みやすくなるのです。したがって、この時期は、自分の“心の声”をしっかり聞くように努めましょう。大切なのは、どんな感情が湧き上がっても、否定せず、受け止めて、そして追わないこと。
「あれはどうだった」「これはこうした方がよかった」「誰が悪い」ではなく、ただ「悲しかったんだな」「苦しかったんだな」と受け止めることです。

 

「秋分」の過ごしかた(養生)は?

秋は、一年のうちで最も“養生がしやすい時期”。涼しくなって空気も軽くなり、夏で消耗した身体を回復させるには、ぴったりのシーズンです。気温が下がるぶん眠りやすくなり、食べ物の実りも豊かで、栄養も摂りやすくなります。肺が乾燥に弱い反面、脾・胃は乾燥を好むため、消化吸収がしやすくなるといったメリットも……。つまり、おいしく食べて、しっかり消化吸収ができるので、体力を回復させるためには、うってつけの時期ですね。

先ほど、夏の養生が秋の不調に現れるという話をしましたが、夏の養生ができていなかったとしても「ちゃんとしておけばよかった!」と、後悔しないように! “できなかったことを後悔しない”ことも、この時期の養生のひとつです。

一方で、五行論で“悲しみの季節”とされる秋の養生としては、肺を元気に保つための「深い呼吸」が不可欠です。良い呼吸とは、細くて、長くて、少ない呼吸のこと。そこで、吐く息に意識を向けながら“ゆっくり、細く、長く”息を吐くよう心がけてみてください。鼻から吸っても口から吸ってもかまいませんので、とにかく肩を上げず、お腹をしっかりと膨らませて、身体全部を使うイメージで行いましょう。

ちなみに気功の世界では、呼吸をエネルギーを生み出すための「鞴(ふいご)」と考えるのだとか。鞴とは、昔のお風呂を沸かす際に使った竹筒のように、空気を送ることで火(エネルギー)を生み出すもの。しっかり胸を開いたら、鞴のような呼吸で身体中にしっかり空気を取り入れ、細く、長く吐き出す深い呼吸を、ぜひ、身につけてくださいね。

(イメージ:写真AC)

 

「秋分」の中医学的・たのしみごと

ちょうど、今日(9/21)は「中秋の名月(十五夜)」ですね!
月などの自然を眺めることは、心を穏やかに保つための“心の養生=「養心(ようしん)」”にぴったり。心地よい風を浴びながら夜空を楽しむお月見は、まさにこの時期ならではの楽しみ、と言えるのではないでしょうか。

そして、お月見と言えば、「月見団子」。手作りすれば、風情も増しますね。この「月見団子」、原料にもち米を使用した“白玉粉”で作ることが多いのでは? 中医学では、もち米はお腹を元気にし、この時期に気をつけたい呼吸器系や肌を潤す働きがあるとされています。この月見団子を食べながらのお月見は、心身ともにラッキーアクションに繋がるといっても、過言ではありません――!

(イメージ:写真AC)

 ちなみに「月見団子」ですが、もち米は温性なので、肌荒れやニキビ、アレルギー系の炎症がある人に“白玉粉”は向いていません……。
そういう場合は、うるち米を使用した“上新粉”を使ってお団子を作りましょう。うるち米には、こもった熱をとり、胃腸を整え、心を落ち着ける働きがあります。
ぜひ、体質にあわせたお団子を片手に、美しい秋の夜を楽しんでくださいね。

*次回は10月7日(火)更新予定です。

構成・文/国実マヤコ
バナーイラスト/Sunny

Written by sakurai_daisuke
櫻井大典

アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。
SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず新たな漢方ユーザーを増やしている。
主な著書に『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』(当社)、『ミドリ薬品漢方堂のまいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』『ミドリ薬品漢方堂のまいにち漢方食材帖』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)。監修に『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』ほか多数。
Twitter: @PandaKanpo
HP:https://yurukampo.jp/

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