異色の経歴を持つ料理家「おとな料理制作室」の美窪さんにインタビュー


「時短!」「簡単!」「誰でも!」――
本屋のレシピ本コーナーには、ひとしく同じ謳い文句がならび、料理ビギナーには嬉しいものの、「もっと、じっくり料理を楽しみたい」という人には、どうも寂しいかぎり……。

そんな昨今、会社員からバーテンダー、日本料理人と、異色の経歴を持つ料理家・美窪たえさんがnoteで綴る食エッセイ「おとな料理制作室」が、料理家ならではのレシピ、そして読み応えのある文章で、注目を集めていることをご存知ですか?

春の野菜で作るおひたし、つるんと食べられる皿ワンタン、アレンジ自在の砂肝のコンフィ、どこまでも赤いラタトゥイユ、熱々をいただく納豆汁など……料理好きなあなたを唸らせる大満足のレシピと食エッセイがずらり。まさに“食欲の秋”にぴったりの『おとな料理制作室へようこそ』を上梓したばかりの美窪たえさんに、お話を伺いました。


(写真:『おとな料理制作室へようこそ』より)

 

会社員から飲食業界へ……華麗なる転身のワケ

――『おとな料理制作室へようこそ』のご出版、おめでとうございます! こちらはnoteで大変人気のコンテンツとなりますが、美窪さんにとって、noteはどのような場所でしょうか。また、読者の方から、どのような反響がありますか?

美窪:ありがとうございます! noteは私にとって、日常では出会えない方々や想いと出会える、まさに『場所』です。YouTubeとの連携の効果もあり、「おいしそう」や「作ってみたい!」というコメントをいただくことが多く、とても嬉しく思っています。


(写真:おとな料理制作室

――たしかに、思わず作ってみたくなるレシピばかりですよね! ところで、会社員→バーテンダー→日本料理人→フレンチコック→フードプロデューサーという、異色の経歴をお持ちの美窪さんですが、飲食業界に飛び込むきっかけは、ふと目に留まったバーテンダースクールの記事だったとか?

美窪:そうなんです。会社員時代に「今放り出されたら、自分はどうなるのだろう」と不安を感じる経験をして、何か一つでも「これなら生きていける」と自信が持てることを身に付けたいと考えました。当時まだ女性のバーテンダーは少なかったので、単純に恰好良さそうと思ったのが一番の決め手です(笑)。

――人生の岐路で迷う、多くの人の参考になりそうなエピソードですね! さて、本書ですが、レシピの完成度は言うまでもなく、各レシピの導入にあるエッセイ&雑記も、どれも滋味深いものばかり……。向田邦子を彷彿とさせる美窪さんならではの文章力は、いったいどのように身につけられたものなのでしょうか?

美窪:向田邦子さんのお名前が出るとは大変恐縮ですが、とても嬉しいです。料理のレシピや技術は実際の調理場で身につけたものがほとんどですが、企業内でフードプロデューサーを務めた時に、お客さまやお店のスタッフをはじめ、現場を知らない方々にまで「料理を、どう伝えるか」に腐心した経験が生きているかもしれません。


(写真:おとな料理制作室


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