健康意識が高まる漢方コラム:立冬(11/7頃)の過ごしかた

健康意識が高まる漢方コラム:立冬(11/7頃)の過ごしかた


人気の漢方専門家・櫻井大典先生に、季節「二十四節気」に合わせた中医学について学ぶ、心と身体のための「かんぽう歳時記」。

中医学は「季節の養生」と言われるほど“こよみ”を大切にしています。
そこで、この二十四節気ごとに、おすすめの食材(パワーフード)や養生法などを、たっぷりとご紹介!

数千年という歴史に裏づけられた、中医学の“知恵”を学びながら、日本の美しい四季おりおりを、もっと元気に、もっとたのしく、過ごしてみませんか――?

第10回は、「立冬(11/7頃)」です。

 

「立冬」って、どんな季節なの?

秋の土用(10/20-11/6)を過ぎ、暦の上では、いよいよ冬の始まりです。気温が下がり日暮れも早まるため、寒さから行動力も鈍って、気持ちもどこか内向きに……。とはいえ、これは自然の摂理にかなっていること。中医学では、春夏秋冬のなかでも、冬がもっとも体調を崩しやすい季節と考えます。
寒さと乾燥で、身体が負担を受けやすいこの時期のキーワードは「守り」――。「守り」を強化する方法について、具体的にご説明していきましょう。

(イメージ:写真AC)

 

「立冬」のパワーフードは?

「立冬」の頃におすすめの食材(パワーフード)は、ズバリ、「黒豆」
黒豆は、冬に弱りがちな腎※1を元気にし、血流を良くするのみならず、足りない血を補ってくれます。貧血、老化防止、疲労改善、また肩こりや生理痛などの痛みにもよく、養生的にとてもよい食材です。平性※2なのでどなたでも食べやすいのですが、甘く煮ないよう気をつけてください。甘く煮ると砂糖を多く使うので、身体に負担になることも……。
おすすめは、そのまま黒豆をコトコト煮て塩で軽く味付けをした、シンプルな黒豆スープ。素朴な滋味深い味で、慣れるとおいしいですよ。炒り黒豆をポリポリ食べてもいいですし、黒豆粥もいいですね。ぜひ、冬場は意識的に黒豆を食べてみてください。

(イメージ:写真AC)

また、同じく腎を強くし、身体をあたためてくれる「エビ」も、とくに冷え性の人におすすめ。そして、ゾクっと寒気がするような風邪の初期には、「ショウガ」をすってお湯に入れ、はちみつや黒砂糖を加えた生姜湯を飲むといいでしょう。生のショウガには悪寒などの冷えを散らす効能があります。ただし、喉の痛みがある場合は、避けること。痛みは炎症なので、温めると悪化する可能性もあります。また、冷え性の人は「乾姜(かんしょう)」といって、ショウガをスライスして乾燥させたものを摂るといいですね。

(※1)「五行論」に基づく、「肝、心、脾、肺、腎」の5つを「五臓」といいます。いわゆる「五臓六腑」の五臓にあたり、肝は春、心は夏、脾は長夏(梅雨)、肺は秋、腎は冬に活発に動くとされています。

(※2)「五行論」に基づく、食べ物が持つ5つの性質「寒、涼、温、熱、平」を、「五性(五気)」といいます。その食べ物を食べたときに、体内で身体を温めるか、冷ますか、あるいは寒熱のかたよりが起こらないかによって分類され、いずれにも属さず、かたよりのないものが「平性」となります。

 

「立冬」の頃の、心と身体の状態は?

冒頭でも触れた通り、寒さから行動力が鈍り、気持ちもどこか内向きになるこの時期――。
外に出たり、人に会うことを自然とセーブすることで、寒さと乾燥で奪われてしまうエネルギー(気)の消耗を避けようとし始める頃です。

ただし、あまりに内向的になってしまうと、いわゆる「陽気」が減って「陰気」に変化。結果として、心身のバランスを崩してしまう人もいるかもしれません……。とくに、朝などは気温がグッと下がっていることから、寝ているあいだに心も身体も縮こまって、「気持ちが塞ぎがちで、布団から出られない」「起きたくない」という人も多くなることでしょう。

では、どのような過ごし方(養生)をすればよいのでしょうか――?

 

「立冬」の過ごしかた(養生)は?

立冬を過ぎたら、“夜は早く寝て、朝はゆっくり起きる”ことを心がけてみましょう。そして、朝、目が覚めたら、まずは布団のなかで、大きく背伸びをしてください。「起きたくない」と感じたら、まずは、縮こまった心と身体を、しっかり伸ばしてあげましょう!

そして、日照時間が減っていくこの時期、「陽気」が減って、心身のバランスを崩している人にトライしてほしい養生のひとつが、できるだけ日の光を浴びること。
ポイントは、陽気の脈やツボが通っている“背中”に光をあてることです。太陽の「陽気」をしっかりと背中に浴びることで、「陰気」を「陽気」にチェンジ! よく「陽気な人」「陰気な人」などと言いますね。ぜひ、たっぷりと陽気を浴びて「陽気な人」になってください。

そして、夜には、できるだけお風呂に入りましょう。このとき、とくに下半身を意識して温まるようにしてください。ただボーッとお湯に浸かるのもいいですが、浸かりながら足の指を丁寧に洗ったり、足裏のツボ「湧泉」あたりをマッサージしたりと、末端の血流を促すよう意識するとなおよし。
忙しくて毎日お風呂を沸かせない人や、浴槽に浸かるのが苦手な人は、浴槽に栓をしたままシャワーを浴びるのもおすすめ。身体を洗っている間にお湯が溜まり、自然と“足湯”をすることが出来ます。


(イメージ:PIXTA)

 

「立冬」の中医学的・たのしみごと

木々が赤や黄に色づきはじめ、秋の行楽シーズン到来! 今年は紅葉狩りを楽しんではいかが?
冬は“恐れ”の感情が強くなりやすい時期。そんなとき、中医学では心を穏やかに保つためにも、自然に触れたり、あるいは自然の中に身を置くことを大切にしています。ちなみに、中医学の養生のひとつに「山の稜線を眺める」という方法があるほどです。

そこで、近場の大きな公園、あるいは、少し遠出して山の稜線が見えるような場所へ赴き、ぜひ、紅葉を眺めながら適度に歩いて、季節の移り変わりを楽しみましょう。
ちなみに、歩く刺激が足腰に伝わると、冬に労るべき腎を元気にするので、まさに一石二鳥のラッキーアクションなんですよ。そうそう、肺を元気にする深呼吸もお忘れなく!

ぜひ、適度に歩くことができる大きな公園をチョイスして、紅葉狩りを楽しんでくださいね。

 

紅葉の名所には、寺社仏閣があることも多いですね。じつは、この寺社仏閣、「木」や「土」もあれば池や手水鉢などの「水」もあり、さらに蝋燭の「火」に鈴(「金」)と、なんと五行(五臓)のバランスがとれた、まさにパワースポット! 寺社仏閣に行くと心が落ち着くのは、こうした理由もあるのかもしれません――。
ぜひ、紅葉狩りの、コース選びの参考まで!

*次回は「小雪」11月19日(金)更新予定です。

構成・文/国実マヤコ
バナーイラスト/Sunny


Written by 櫻井大典
櫻井大典

アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。
SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず新たな漢方ユーザーを増やしている。
主な著書に『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』、『こころの不調に効く! 気楽に、気うつ消し』(ともにワニブックス)、『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)、『漢方的おうち健診』(学研プラス)ほか多数。
Twitter: @PandaKanpo
Instagram: @pandakanpo
HP:https://yurukampo.jp/

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