【interview】「古きもの」リメイクで大注目の71歳YouTuberにインタビュー!


「趣味の手芸全般を孫に見てもらいたくて」――。
そんな、ささやかな気持ちでスタートしたというYouTubeチャンネル「Diy Soho手作り倉庫」。今や登録者数22万人超を誇るこのチャンネルを、なんと撮影から編集まで、すべて一人でこなすのは、吉田三世さん(71)。
特に、ここ1年ほどは「古きもの=リサイクルきもの」をリメイクした小物や洋服が視聴者に受け、このたび、待望の書籍『古きもので作る洋服と小物』を上梓!

ここでは、そんな吉田三世さんに直撃インタビュー。バイタリティあふれる素顔に迫ります。

 

クリエイティビティ&バイタリティの源は――?

――『古きもので作る洋服と小物』拝読させていただきました。ご出版、誠におめでとうございます! YouTubeチャンネル「DIY soho 手作り倉庫」は、すでに登録者22.7万人(2022年3月現在)といった人気ぶりですが、その斬新なクリエイティビティ&力強いバイタリティは、いったいどこから湧いてくるのでしょうか?

 吉田: YouTubeの動画配信は、趣味の手作りを孫に見てもらいたくて始めましたが、続けるうちにあたたかいコメントに背中を押されていることに気付いていきました。YouTubeの動画の向こうは1人です。22万人の登録があっても視聴者さんとは1対1。ミシンはない、道具もない、もちろん裁縫も知らない、それでも何か作りたい……といった、それぞれの事情があることでしょう。そんなすべての人に向けて、「高価な道具や材料がなくても形にすることはできるよ。身近にある物で作ってみてね」といつも思っています。

小学校高学年の頃、わずかなおこづかいで古本屋さんで買った洋裁本の付録……。そこから洋服を作り上げた感動が、今の自分につながっているのかもしれませんね。

YouTubeを続けていくことは簡単ではありません。作品決め、材料の調達、試作、準備、撮影、編集と、多くの時間を費やします。でもその労力以上に、視聴された方から寄せられるあたたかいコメントに助けられ癒されるのです。この歳で、撮影や編集をすべて自身で手がけるエネルギ-の理由は、そんな思いがあるからかもしれません。これからも自分なりにシンプルで生活が豊かになる提案を続けていきたいと思っています。

――従来のように「家にあるきものをリメイクしよう!」ではなく、なぜ、吉田さんが“あえて”手芸や洋裁に「古きもの」を取り入れるようになったのか、その原点について、あらためてお聞かせいただければと思います。

吉田: リサイクルきものを取り入れるようになったのはまだ1年ほどです。きっかけはフリマサイトで大島紬の特別にお値打ちなきものを見つけたことです。かなりの衝撃でした。日本の伝統の民族衣装、技術の価値がこんなことになってしまっている……。そこで、私にできることは何かを考えました。今、スタ-ト地点に立ったばかりです。

きものの幅は決まっていますし、布の色、柄と、ほぼ同じものはありません。つまり、満ち足りた材料とは言えないんです。ところが、この制約こそが個性や工夫を生み出すと考えています。私の基本的な考えですが、満ち足りたものから新しいデザインや提案は生まれないと思っています。というのは、仕事で30年間ダンス衣装などを手掛けてきた中で、布の分量が足りない、使いたいパ-ツが見つからないといったことが多かったのです。ずっとこのことに悩まされてきましたが、むしろ制約があったからこそ、新しい色合わせや形を生み出すことができました。

きものの布の高級感、名もない作家さんの渾身のデザイン、現代の人々よりむしろ大胆でおしゃれな色、柄、質感といった良さを、一生懸命形にしました。本を手に取っていただいた皆様に伝わると嬉しいです。

 

「古きもの」セレクトのコツ&おすすめ作品は――?

――どこか縁遠いイメージだった「古きもの」ですが、吉田さんの遊び心あふれるおしゃれなリメイク作品を拝見するうち、自分も手に入れたいと思うようになりました! そこで、ネットや店での「古きもの」の物色について、気をつける点やセレクトのコツがあれば、ぜひ、お教えいただけますか?

 吉田: 初心者さんは、まずはお店に出向いて手に取って見ていただくことをおすすめします。お店の人にしつこくあれこれ聞いてみましょう。生地の名前、着用される場面、素材などなど多様であり、さらに、きものには一応の約束事もあります。
知らないことばかりでもいいじゃないですか。実際にきものに触れてみて、きものの良さを実感していただきたいと思います。

――今回の御本で紹介されている作品のうち、初心者が実際に最初に作るとすれば、どの作品がおすすめでしょうか? 

吉田:おすすめ作品は、「タックのある単(ひとえ)帯バッグ」です。古着の帯は安価で買えますし、単の帯は購入したらすぐに使えます。帯一本で、表裏、両方の柄を楽しんでみてください!

「60年以上手作りを楽しんできましたが、きもののリメイクを始めてから、きものの奥の深さを実感しています」と語る、吉田さん。
『世界一わかりやすい 1g=0.5円からの 古きもので作る洋服と小物』では、古きものを「買う、ほどく、洗う、縫う」といった工程が、写真付きで丁寧に説明されています。さらに「QRコードで読み込める作り方動画」もあるので、初心者でも安心!

また、衿ぐりや脇下など、使いまわせる実物大型紙付きなのもうれしいポイントですね。今回、吉田さんがリサイクルショップや骨董市で素材として買った古着のきものの最安値は、なんと、1g=0.5円(350円ほど)。古きものなら、正絹の生地も、唯一無二の色・柄も、安く選び放題で、ワンピースやトップスにパンツ、バッグやベレー帽に早変わりします!

「ほぼ一点物のきもの素材を最大限生かして、洋服や小物作りを楽しんでくださいね」――吉田三世

写真/中島千絵美、文/国実マヤコ

古きもので作る洋服と小物
著:吉田 三世

吉田 三世(Miyo Yoshida)

1950年生まれ。手作り歴60年余り。手作りはほぼ独学。40歳を過ぎてから、社交ダンスやオペラの舞台衣装等の製作会社を設立し、現在に至る。2015年、子供の頃から親しんできた手芸全般を孫に向けて残しておこうと考え、YouTubeに動画投稿を開始。縫い物、編み物を含め手芸全般ジャンルを決めずに動画投稿を続けている。2020年頃からきもののリメイクを積極的に始める。現在、チャンネル登録者数は22.7万人(2022年3月現在)。
YouTube Diy Soho手作り倉庫
Twitter @diy_soho2

プロフィール撮影:中島千絵美