日韓で共通する「結婚への強迫観念」から抜け出すには?


ソヌさん:会社から独立した30代の間ずっと、強迫観念にとらわれた言葉をたくさん聞きました。知人や周りの人たちから「結婚しないと後で寂しいよ。1人孤独に死ぬの?」「結婚しないの? 友達はみんな結婚して家族ができたのに、あなただけ1人で寂しいね」というような言葉をたくさん聞いてきたんです。

ドラマなどで未婚の人を否定するような描写もたくさん見てきたので、先入観を抱かせられてきたんです。私は出版社で仕事をしていたので、会社の先輩たちがそのような言葉をたくさん受けているのも見てきました。だけど先輩を見ていると、結婚していようがいまいが、友達は多いし人間関係も良好だし、寂しさや孤独を感じていないのに、40〜50代の女性たちがなんでそんな風に言われるんだろう? と考えたとき、社会がそういう方向に女性たちを扇動しているんじゃないかと思ったんです。

自分が若い頃に「大丈夫だよ!」と言ってくれるお姉さんがいてくれたら、もっと人生が気楽だっただろうと思います。些細なことにエネルギーを使うこともなかったんじゃないかなと。「友達と気楽に付き合って、もっと良い人と出会って恋愛をしなきゃ! 付き合わなきゃ!」と縛られていたからデートしていたけど、それがモヤモヤしてたりもして、今考えるとそのエネルギーがもったいなかったですね(笑)。その時はそうするしかなかったですし、時代の雰囲気がそうだったんだと思うんですけど。その情熱とパワーを、もっと楽しく使うことだってできたのに。そんな気持ちを本に込めました。「結婚していないからわかるんですが(P96)」の章は、特にそのときの気持ちを思い出しながら書きました。

ハナさん:私たちふたりが望遠洞(ソウルの街)を歩いていると、すれ違う女性たちから「ファイティン!!!」「本読みました!」と激励されたり挨拶されたりすることがあるんです(笑)。ひとりでいるよりも、私たちふたりでいると、より目立つみたいです。また、望遠洞という街にも、そんな雰囲気があるようで。2、3人で住んでいる女性が多いんですよ。特別なのは私たちが家を買ったこと、また職業柄面白いエピソードや要素があるみたいです。私たちの関係をどういうふうに呼べばいいかわからなかったけれど、読者の方が「組み立て式家族」「分子家族」という単語をつけてくださって、私たちの関係を表現できる言葉を見つけることができました。

 

――キム・ハナさんは自ら、コミュニティを積極的に作られていると著書を読んで感じました。昨年からのコロナ禍で、さらにコミュニティの重要性を感じるようになりましたか?

ソヌさん:以前はよく友達と集まっていましたが、コロナのために集まることもなくなって、暮らすのもしんどかったのですが、最近は少しずつ人に会おうとしているところです。ステイホームをしながら家で仕事もする中で、気楽に会うことができる空間を作ろうと。

ハナさんはコミュニティ提案者です。「何か他の人と一緒にできないか?」といつも考えています。2019年頃に、女性作家が30人くらい集まったこともあります。まだマスクがない時代ですね(笑)。 その時出会った人たちでメーリングリストを作って、お互い連絡を取っています。

インターネット上ですが、元気ですか? と声を掛け合って、頻繁に会うことはなくても、連絡を取り合う関係。会社員のときは、こんな関係が必要だとは思わなかったんですが、フリーランスになって、SNS上のコミュニケーションにも大きな栄養があるんだなと考えるようになりました。オフラインで会うことはできないけれど、たまに近況報告をしています。

ハナさん:一緒に集まって活動するコミュニティも重要ですが、安否確認しあうようようなコミュニティにも大きな安心感があるようです。ひとりでいると安否確認も難しいけれど、周りに人がいることで確認し合える環境。コロナ時代の今は、以前よりも重要になっていると思います。ひとりですべてをすることはできないから、より安心感のある繋がりが必要ですね。

また、猫も大切な家族ですが、人と出会えたことがすごくありがたいし、こんな時代に家族としてお互い支え合える、私たちが出会えたこともラッキーでした。こういうエピソードを他の人にも共有したいです。有形の家族として存在することが、重要じゃないのかな。

ソヌさん:読者の方から、「望遠洞に引っ越したいです」「作家さんたちのコミュニティに参加したいです」というメッセージをいただくことがよくあるのですが、実は望遠洞じゃなくても、もともとあるコミュニティに入るだけじゃなく、こうやって新たな関係を自ら築いていってもいいと思うんです。

周りの友達の中には読書クラブとして集まっている人もいますし、毎日会ってお酒を飲んでいる友達もいますが、運動だったり読書だったり、何かを通して一緒に時間を過ごす関係は、シングルの女性たちにとっても重要なようです。自分が住んでいる場所でも、どこでだってコミュニティを作ることはできます。

ひとりで暮らしている女性は共感力が高い人が多いので、集まって悲しかったことを共感することも癒しになるし、お互いに助け合うことが必要なんじゃないでしょうか。

ハナさん:2、3歳上のシングルの女性の友人がいて、猫と犬と一緒に暮らしていたんですが、犬が亡くなってしまったんです。彼女はすごく落ち込んでいたので、周りの友達が彼女の家へ代わる代わる通いました。友達に会って、バトンタッチして、また次の友達が来て。ひとりでいたら苦しいじゃないですか。私たち全員が慰めて、一緒に時間を過ごして。周りにそういう存在がいることが、家族を亡くした悲しみを乗り越えるためにも大切だと思います。


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