ありのままの自分を受け入れた先に見えるものとは? 中山咲月さん『無性愛』発売記念インタビュー後編
ミステリアスでジェンダーレスな雰囲気で人気の俳優・モデルの中山咲月さん。
初のフォトエッセイとなる『無性愛』の中では、ご自身が無性愛者であり、トランスジェンターでもあると告白しています。
その告白に至った経緯や、抱えてきた思いとは?
フォトエッセイ出版を記念して、特別に語っていただきました!
――これまで「ジェンダーレス」といった言葉で語られることの多かった中山さんですが、今回の『無性愛』では、「中性的じゃたりない。男になります」と、ご自身がトランスジェンダーであると告白しています。この告白に至ったきっかけがあれば、お教えいただけますか?
『彼らが本気で編むときは、』という、生田斗真さんが主演されている映画を見たんですが、それがトランスジェンダーの話で。カミングアウトすることの難しさを題材にしている映画だったのですが、それを見た後、もう、丸1日苦しんだんです。
なぜ苦しんでいるのか理由もわからないまま、本当にモヤモヤした気持ちでずっと過ごしていたんですが……。いろいろ考えた結果、「共感できる部分がすごく多い」「自分はトランスジェンダーなのかもしれない」と思ったんですよね。
トランスジェンダーだと認識するきっかけって、恋愛であることが多いらしいんですよ。同性のことを好きになった結果、自分はもしかしたら今とは違う性なのかもしれないと気づく、と。
ただ、自分の場合、無性愛者なのでそういった経験がなくて、きっかけが全然訪れなかったんですよね。でも、その映画がきっかけで、自分のことがまた新たに分かりました。
――いわゆる性自認にはいろんなパターンがありますよね。例えば女であるという自認、男であるという自認、さらに、男性とも女性とも言えないXジェンダーや、まだ性自認が定まっていないクエスチョニングなどもあると思うのですが、中山さんの「自分は男なんだ」という感覚は、どういった時に分かったのでしょうか?
それはもう、日常生活の中に散りばめられていますね。もう日々日々、毎日1回は、自分は女じゃないと思っていました。
本当に些細なことを例に挙げると、自分には弟がいるんですけど、弟が声変わりした時に、自分は弟より年上なのになんで声変わりしないんだろうと一時期病んでしまったりだとか。あとは、お仕事とかで男性俳優さんに囲まれた時に、「自分だけ身長小さいな」「ガタイも良くないな」と感じたり。ファッションも、女性らしい服を着る時は、違和感がすごいんですよね。着たくないなと思ってしまう。
すべて、周りからしたら「女だから当たり前だろう」って感じなんですけど、自分は自分のことを女だと思えないので、苦しい、生きづらい、と感じてしまう。
――自認している性が男性だからこそ、女性として扱われるたびに違和感があったということなんですね。でも、ご自身がトランスジェンダーだと正式に気づかれたのは最近の出来事ではありますよね。それまでは、そういう扱いをされる度に感じる違和感をどうやって受け入れてきたのでしょうか?
いやでもやっぱり、現実逃避はしていましたよね。仕事とかで女性扱いを受けた時は……正直に言ってしまうと、仕事がつらくて。極論言うと、生きているのもつらくて。でもなんでこんなにつらいんだろうって、その理由もわからなかったんです。
でも、トランスジェンダーだと認識した後、長い付き合いの友達に「自分は女じゃないかもしれない」とカミングアウトしたら、「知ってた」って言われて。自分より先に知ってくれていて、なおかつ自分のことを女性として扱っていなかったんです。
親友が自分のことを、女性ではなく人間として扱ってくれていた環境があったから、気持ちの逃げ道になっていたんだなって思いますね。