ありのままの自分を受け入れた先に見えるものとは? 中山咲月さん『無性愛』発売記念インタビュー後編


――ここで話題を変えまして、写真集のビジュアルについてお聞きします。学生服に身を包んだ少年、うるわしきバーレスクのトップスター、憂いのある文豪など、まるで小説を読むような、溜息がでるほど美しい写真の数々ですね……。これらのなかで、中山さんが特に気に入っている写真は、どれですか?

今回の取材の前に、改めて写真集を見返したのですが、一番好きなのは、このシーンですね。
バーレスクの用心棒をしている「ならず者」という設定で。自分の今の心情に一番近いものがこれなんですよ。これはキネマ倶楽部で撮影したんですけど、同じ場所で撮影した別の写真もあります。
そちらはスーツを着て表舞台で笑っている自分、みんなにキラキラを見せるための自分だけど、この写真の「ならず者」は、ありのまま、素のままで生きている。お金もあまりない設定だけど、きっとこっちの方が生き生きしていると思ったんですよね。幸せかどうかはわからないけど、でも自分の好きなように生きている。
自分で演じているんですけど、憧れというか、こうなっていきたいなって思える写真です。

―撮影の中で、これは結構苦労した!というシーンはありますか。

苦労したシーンはやっぱり海!! 本当に寒かった……(笑)。
自分よりもカメラマンさんの方が大変だったとは思いますが、4月のまだ寒い海の中に入って、しかも結構深い方まで行って、波も強かったので……もう寒くて、どんな気持ちだったかあまり思い出せないくらいです(笑)。

――『ヴェニスに死す』の主人公をオマージュしたシーンもとても素敵でした! 永遠に歳を取らない美少年という感じがして……心を掴まれました。

ありがとうございます。生まれた時から男性として育っている男性は力強い感じになるんですけど、女性に生まれて男性になっていくっていうのは、やはり限界があって、力強くならない、男らしい顔つきにならなかったりするんですよね。それはハンデでもあるけど、逆に捉えたら、永遠に少年でいられるとも言えるなって思って。それは自分の個性であり魅力になるのかもしれないと思いますね。

 

――最後に、今後の「中山咲月」の活動として、「こんなことをやっていきたい!」といった展望をお聞かせください。

この本を出させてもらって、いろいろ考えたんですけど……。自分が最終的に目指す目標というか、こういう世界になって欲しいなと思うのは、「女性だったけど男性になった俳優が、男性役をやります」じゃなくて、「トランスジェンダーが男性役をやることも当たり前」になったらいいなって思います。
特別なことじゃなくて、ちゃんと男性と並んで競い合っても大丈夫な世界になっていけたらいいなと。もちろん、トランスジェンダーじゃない男性が女性の役をやってもいいと思うんですよ。男性が、女性がっていう分け方じゃなくて、性に囚われず、その役に合う人間という視点で決まるような世界になればいいなと思いますし、自分もそういう活動をしていきたいなと思います。

――中山さんがご活躍されて、トランスジェンダーということが話題にならないぐらい当たり前に男性の役をやっていくことで、そういった世界に向かう道標になっていける気がしますね! このたびは、貴重なお話をありがとうございました。写真集『無性愛』が多くの人の元の届くことを祈りつつ、中山さんの今後のご活躍を、よりいっそう楽しみにしています。

写真/高野友也
動画制作/Lee
文/大久保亜季乃

 

初のフォトエッセイ『無性愛』
中山咲月 著
2021年9月17日発売

Amazon限定カバーver.

発売記念【オンライン/対面】個別トーク会開催!

オンライン  2021年9月17日(金)HMV&BOOKS online
大阪       2021年9月18日(土) HMV&BOOKS SHINSAIBASHI ※延期いたします
東京       2021年9月19日(日) HMV&BOOKS SHIBUYA

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※緊急事態宣言の解除によりイベント開催予定となりますが、
国などの行政機関からの要請に準じて延期、または中止になる場合もございます。予めご了承ください。

中山咲月(なかやま・さつき)

1998年9月17日生まれ、東京都出身。モデル・俳優。
13歳でモデルデビュー、雑誌や広告で活躍。俳優として初出演した「中学聖日記」のジェンダーレスな役が話題に。2020年には「仮面ライダー ゼロワン」亡役に抜擢。2021年、日本の結婚観に一石を投じたオンライン演劇『スーパーフラットライフ』に出演し話題に。


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