三尋木奈保のオイスター偏愛記 Ⅰ

三尋木奈保のオイスター偏愛記 Ⅰ


今夜もマッカラン黒バージョン

いちばん好きな食べものは? と問われたら、
私の答えは迷わず「生牡蠣!!」。

 美味しい「料理」は世の中に多くあれど、生牡蠣は生まれたままの「素材」の状態で、調理せずともあの滋味深い味わいを備えているのです。

「生牡蠣ってそんなに美味しいっけ? 印象ないなぁ…」と思った方、オイスターバーと呼ばれる牡蠣の専門店で、ぜひ試してみてください。

オイスターバーには、日本はもちろん世界中から厳選された生牡蠣が並んでいます。

私が通い詰めているのは、六本木の「オストレア」

東京中のオイスターバーを渡り歩いた結果、牡蠣の品質と品ぞろえ、お店の雰囲気ともに「ここがナンバーワン!」と私的に惚れ抜いている名店です。

ここで牡蠣好きの友人と、さまざまな牡蠣を食べ比べするのが私にとっての至福の時間。
広島の「宮島」、北海道の「仙鳳趾(せんぽうし)」や「厚岸」、三重の「的矢」。
ネーミングがユニークなところだと、「カキえもん」や「マルえもん」、「みるくかき」や「小夏」なんていう種類もあります。
海外ならオーストラリアの「コフィンベイ」、アメリカ・ワシントンの「バロンポイント」や「クマモト」などなど…。

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 生牡蠣って、産地、ブランドごとにそれぞれ個性があって、味わいがはっきり違うんです。
これが本当におもしろい!

ざっくり言うと、日本の牡蠣は日本の磯の味がします(昆布っぽいと言いましょうか…)。懐かしくて、落ち着く味わい。鼻に抜ける磯の香りに、子供のころの海水浴の情景を思い出したりして。

対して海外の牡蠣は、日本のものとはまったく異なり、個性的でときにワイルド。「おお、こうきたか!」とドキドキ唸るツウ好みの逸品も。

オイスターバーでは、こうして食べ比べられるのがなんとも楽しく、これぞ正しい牡蠣との向き合い方では、と思うのです。

「この子(牡蠣のことです)は先月よりミルキーになってるねぇ」
「あっさりしてるかと思いきや、後味が濃厚!」
「この子の安定感はさすが!」
「この人の複雑さは、すごく外国人っぽい」などと
牡蠣仲間と語り合いながら、オイスターバーでの夜は更けていきます。 

味わいはもちろん、鼻に抜ける香り、口に含んだときのつるりとした触感、貝殻のビジュアル(これも種類によって全然違うんです)、貝柱からフォークでそっと身を離すときのたっぷとした豊かな音…

こんなにも五感で楽しめる食材って、ほかにあるでしょうか?(いや、ない!)

…と、牡蠣について語り出したら止まらない私。

「牡蠣が好き」と言うと、
よく「あたらない?」と聞かれますが、
「牡蠣は私を裏切らない」と、ここぞのドヤ顔で返すことにしています(笑)。

実際、生牡蠣を年間100個(!)は食べていますが、あたったことは一度もないし。
「百万が一あたったら、そのときは体調不全の自分が悪い。牡蠣は悪くないの」と
牡蠣愛は爆走します。

 牡蠣の旬は、秋から冬。まさに今! 
英語で「r」がつく月(SeptemberからAprilまで)とも言いますね。

 ぜひオイスターバーに足を運んで、奥深い牡蠣ワールドを堪能してみてください。

 

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『Oggiエディター三尋木奈保 My Basic Note ~「ふつうの服でおしゃれな感じ」のつくり方~』

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Banner design&Illustration:Shogo Sekine


Written by Mihirogi Naho

三尋木 奈保(みひろぎ・なほ)/ファッションエディター
働く女性向けのファッション誌『Oggi』を中心に活躍。
近年はアパレルブランドの商品開発などにも携わる。ベーシックな服を色合わせや小物使いで洗練させる、等身大のセンスが大きな反響を呼ぶ。2013年、自身のベーシック・ルールを公開した著書『My Basic Note ふつうの服でおしゃれな感じのつくり方』(小学館刊)を上梓。清潔感のあるこなれたスタイルと卓越したセオリーが幅広い層から支持を集め、11万部を超えるベストセラーに。食や文化を豊かに楽しむライフスタイルにも注目が集まる。
本連載が初のWeb連載となる。

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