第4話 雪女

第4話 雪女


 三人は力なく笑う。いつのまにかハーンもその場から消えている。茂作がひっそりとした声で言った。

 「…わしはそろそろ成仏することにする」

 「私も山に帰るわ」と雪女がつぶやいた。「では最後に、外国人だったヘルン先生の渾身の名文を読みましょう」と巳之吉が言った。

 彼女が叫んでいる最中、彼女の声は細くなって行った、風の叫びのように、――それから彼女は輝いた白い霞となって屋根の棟木の方へ上って、それから煙出しの穴を通ってふるえながら出て行った。
……もう再び彼女は見られなかった。

底本:「小泉八雲全集第八卷 家庭版」第一書房
   1937(昭和12)年1月15日発行

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Written by 森達也
森達也

1956年広島県生まれ。映画監督・作家・明治大学特任教授。テレビ・ディレクター時代の98年、オウム真理教のドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。11年に『A3』(集英社インターナショナル)が講談社ノンフィクション賞を受賞。

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