初の告白フォトエッセイが話題! 中山咲月さん『無性愛』発売記念インタビュー前編


――無性愛者である中山さんは、異性愛や同性愛・両性愛でいうところの“パートナー”という存在は必要とはしていないのでしょうか?

パートナーとなると、代表的なものだと「結婚」という形ですよね。実は、結婚自体には、少し前向きなんです。
というのも、以前、仲の良い友達が病気になった時、結婚のような法的な繋がりがないと不便だろうなと考えた時期があって。例えば、入院時に親族しかサインできないとか。
そういった不便さを実感した時、恋愛感情がなくても、結婚はしてもいいものなんじゃないかと考えたんですよ。支え合っていくための結婚って、いいんじゃないかなと思って。

以前、『スーパーフラットライフ』という舞台に出させていただいたんですけど、結婚がテーマだけど、恋愛の話じゃなかったんです。そういった題材の舞台に出させてもらった時にも、すごく考えさせられて。
法律で縛ることによって生まれる良い関係性があると知ったことで、自分も恋愛感情を人に抱けないけど、結婚はそんなに遠い話じゃないのかもなって思えましたね。自分も、結婚してもいいんじゃないかなって。
相手が自分に合う人だったら、結婚したらいいんじゃないかって思いますね。

――恋愛関係の延長線にある結婚ではなくて、病気の時などにお互いを支え合う、セーフティネットという意味での結婚ということですね。法律制度としての結婚を使用する、という意味合いの。

そうですね。でも、それってつまりは、自分にとっては家族愛なんだろうなって思うんですよね。
この人と家族になりたいと思える、家族愛を抱ける相手と結婚するということ。その気持ちがもし一般的な家族愛とは違うとしたら、もしかしたらその気持ちこそが、自分にとっての恋愛感情なのかもしれないです。
世間一般の恋愛感情とは違うとは思いますが。

――確かに、生まれながらの家族ではない全くの他人に対して、「この人と家族になりたい」と思うのは、大きな愛情が発生している状態ですもんね。そういう相手が見つかること自体、特別なことですよね。

そうだと思います。

――「世界人口の、なんと1%が無性愛者に当てはまる」といった論文もみられるほど、人口としては多いはずの無性愛者。もしかしたら、この記事を読んでいる読者の周りにも、公言していない、もしくは気づいていないだけで、無性愛者がいるかもしれません。もし、好きになった人が無性愛者だった場合、一体どういう態度や言葉をとればいいのか、どういう気持ちで割り切ればいいのか、悩んでしまう人もいると思います。中山さんの経験などから、そういった場合へのアドバイスはありますか?

無性愛者にもいろいろな人がいると思うのですが、自分は多分、結構重症な方で……。
軽度であれば、世間体に合わせて普通に恋愛できる方もいるみたいなんですよね。なので、その場合はわからないですが、あくまで自分の場合で言うと……。
告白をされて、お断りをした時、「好きでいさせて欲しい」と言われたことはけっこうあります。でも、自分はその状態も、つらかったんですよね。恋愛感情を向けられても、同じ気持ちを返せない。そのこと自体が苦しい。

どうしてもと言われたら、相手に合わせることもできないわけではないけれど、自分に嘘をつくことも、嘘の気持ちを相手に渡すこともつらくて。だから自分は、「返せないのにずっと好きでいいの?」と伝えています。
やっぱり、好きになってもらえないのに、ずっと好きでいるなんて、相手にとってもつらいことじゃないですか。お互いにつらくてメリットがない。
だから、厳しいことを言うようだけど、好きになった相手が無性愛者だったら、きっぱり諦めた方が絶対にいいと思います。どっちも幸せになれないし、どちらも我慢する恋愛は健全じゃないですよね。

「恋」は一方的な思いだけど、「愛」は相手を思いやることだと思うんです。相手のことが本当に大切で、愛情を持っているなら、諦めた方がいい。
これは自分にも経験があるのですが、「お互いが幸せになれないから、時間がかかるかもしれないけど、その気持ちは沈静させた方がいい」と伝えた時に、ちゃんと諦めてくれる人って、本当にすごくいい人だし、自分にとっても本当に貴重な人になるんですよ。だから、諦めさせちゃったけど、ゆくゆくは親友になれたりするんです。

――確かに、恋だけじゃなく、根っこに愛があったからこそ、中山さんを思いやって諦めてくれたわけですもんね。時間が経って恋がなくなっても、愛は無くならないから、親愛で結ばれる関係になれる。それはすごく素敵ですね。

はい、そういう気持ちで繋がれるのは、本当に嬉しいです。

写真/高野友也
動画制作/Lee
文/大久保亜季乃

★インタビュー後編はこちら

 

初のフォトエッセイ『無性愛』
中山咲月 著
2021年9月17日発売

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中山咲月(なかやま・さつき)

1998年9月17日生まれ、東京都出身。モデル・俳優。
13歳でモデルデビュー、雑誌や広告で活躍。俳優として初出演した「中学聖日記」のジェンダーレスな役が話題に。2020年には「仮面ライダー ゼロワン」亡役に抜擢。2021年、日本の結婚観に一石を投じたオンライン演劇『スーパーフラットライフ』に出演し話題に。


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